30 U ページ30
広臣を拒絶したことに
何も思わなかったわけはない。
急ぎの用だと
呼び出されたときは
心臓がばくばく鳴ったし
去り際、どうか追いかけてこないでと
切に願った。
腕を捕まれて
その胸に抱かれればきっと
簡単にほだされてしまうような
脆い決心だったから。
だから、広臣が追いかけも引き留めもしなかったとき
少しホッとした反面
胸の奥がずきりと痛んだ。
なんてわがままな心臓だろう。
自分から広臣を傷付けておいて
自分が傷付く資格なんてないのに。
でもこれでいいんだ。
どこかできっかけが必要なら
それは今がいい。
今ならまだ、自分を誤魔化すことができるから。
そう、思っていた。
誰もいないオフィスで
項垂れる広臣を抱き締める
糸崎さんの姿を見るまでは。
思わず身を隠した。
口を押さえて
震える身体を落ち着ける。
彼女が広臣とうまくいくことは
本来なら望ましき展開であるはずなのに
目の当たりにするまで気付かなかった。
歴代彼女たちとのイチャイチャシーンを見せられた昔のそれとは、次元が違う。
広臣が、他の女の子に
こうして"特別"な
無防備な、弱い姿を見せることが
私にこんなにショックを与えるなんて
思いもよらなかった。
チャラくてクールで余裕綽々な広臣の
ひとつ裏の素の顔を見せるのは
私だけのはずだったのに。
臣「…悪い、情けねーな…」
糸「大丈夫、私が傍にいますから」
もう一度確認する。
私が傷付く資格はない。
なのにどうだろう。
今の私は
広臣と糸崎さんの想像以上の親密さに
想像以上に動揺している。
、
やがてふたりでオフィスを出る姿を
私は隠れて見ているしかなかった。
自業自得。
こうするしかなかったのだ。
でも、正しい道とは何故
こんなにも辛くて険しいのだろう。
真綿にくるまれながら
外の雑音をシャットアウトして
坂道を一気に駆け抜ける道を選びたくても
もう遅い。
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mikikomikiko042(プロフ) - 感情移入してしまい 泣けます 物語を読んでつくづく恋愛に正しいも正しくないもないのかもなと思いました。好きな気持ちは罪ですねー私は剛典が知っててクリスマスイブ自由にしたのに怖いよりもそーゆー選択もあるのかなと。 (2017年9月24日 0時) (
レス) id: bafd6d7784 (このIDを非表示/違反報告)
Ayaka(プロフ) - 私もお話書かせて頂いてるのですがNEEさんの作品は私がお話書き始める前に読ませて頂いてました！久しぶりに読んだのですがやっぱり素敵なお話でいい刺激受けました＼(^^)／ありがとうございます！ (2017年8月11日 12時) (レス) id: af7111a19c (このIDを非表示/違反報告)
BABY.(プロフ) - NEEさんのお話は前から読まさせて頂いてるんですが、本当に感情移入しやすいので、物語で泣いたのは本当に初めてでした。臣と岩ちゃんのキャラ本当に大好きでした。感動するお話をありがとうございました！！！これからもNEEさん、応援してます ♪ (2016年8月14日 1時) (レス) id: 9ddc573c34 (このIDを非表示/違反報告)
NR - ズット読ませてもらってました！！名前変えたので覚えてもらえてないとは思いますが…すごく主人公ちゃんの気持ちがわかります！ダメなのわかってるのに目で追ってしまうー私も経験済みでした。見てない、気にしてないふりしなかまらガッツリ気になってるー止められませ (2016年8月1日 1時) (レス) id: 6fe09feffd (このIDを非表示/違反報告)
NEE(プロフ) - maman727さん» こちらもコメントありがとうございます！不倫だめなんですけど、わかってるんですけどねぇ。。確かに岩ちゃん離婚はしなさそうですね！ホラーですしね(笑) (2016年3月3日 9時) (レス) id: 7b2f44dc73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NEE
| 作成日時：2015年12月4日 0時
