11 H ページ11
旦那。
…タカノリ。
あいつの口から
その名前が出るたびに
胸の奥がジリジリと痛んで
酷い衝動にかられる。
……全部壊して、俺のものにしたい。
今までこんなに誰かに執着したことはなかった。
自惚れた言い方をすれば
基本的に手に入らない女などいなかったし
そんな女への興味などすぐに薄れたものだったのに。
あいつだけは違う。
何年経っても
俺のものじゃなくても
やっぱり、好き、なんだ。
電話に出るだけであんな顔をさせる"旦那"のもとに
どうしても返したくなかった。
車に乗り込む姿は遠目で見たけど
変わらず仲の良さそうな様子に
普段持つことのない感情が
俺を支配する。
……嫉妬。
むしゃくしゃする。
そんなとき
『……臣課長？』
入り口付近で立ち止まる俺を見つけたのは
さっきの携帯番号の女の子。
たしか事務課の、糸崎。
糸「大丈夫ですか？顔色、良くないです」
心配そうに見上げる瞳には熱が籠っている。
隣の課か。
毎日顔は合わせるだろうが直属の部下ではない。
打算的に頭が働く。
臣「…時差ボケかな。ちょっと肩貸して」
首筋に顔を埋めると
彼女が硬直するのがわかる。
触れる頬は、熱を持って熱い。
糸「……私に介抱させてくれませんか？」
社内の女とは寝ない。
仕事に響くし、女はすぐに裏切る。
……でもそうでない女も少数いて
俺はそれを嗅ぎとる嗅覚に、割りと自信がある。
震える声でそう言う彼女の耳元で
わざと囁いてみる。
臣「俺の熱を冷ましてくれんの？」
糸「はい……私で良ければ」
なぁ、A。
何で俺が昔から、お前が"チャラ臣"って言うくらい
女遊びが激しかったか知ってる？
いつも一番傍にいるAが
その笑顔や
声や
仕草や
Aを形作る全てにおいて
俺を魅了していながら
俺には踏み込ませない領域を作っていたから。
Aへの気持ちを鎮めるためにも
それは必要なことだったんだ。
そして、それは今も変わらぬまま。
こちらに人の来る気配はない。
俺が熱く見つめると
吸い寄せられるかのように
目の前の彼女が俺の唇へ触れる。
そして、それは徐々に激しくなり
息苦しそうに甘い声を漏らす彼女は
俺のシャツにしがみつく。
あいつへの気持ちを落ち着けるために
俺はとにかく頭をカラッポにして
目の前の彼女を求めた。
今からこれじゃ
前途多難だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1318人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「登坂広臣」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mikikomikiko042(プロフ) - 感情移入してしまい 泣けます 物語を読んでつくづく恋愛に正しいも正しくないもないのかもなと思いました。好きな気持ちは罪ですねー私は剛典が知っててクリスマスイブ自由にしたのに怖いよりもそーゆー選択もあるのかなと。 (2017年9月24日 0時) (
レス) id: bafd6d7784 (このIDを非表示/違反報告)
Ayaka(プロフ) - 私もお話書かせて頂いてるのですがNEEさんの作品は私がお話書き始める前に読ませて頂いてました！久しぶりに読んだのですがやっぱり素敵なお話でいい刺激受けました＼(^^)／ありがとうございます！ (2017年8月11日 12時) (レス) id: af7111a19c (このIDを非表示/違反報告)
BABY.(プロフ) - NEEさんのお話は前から読まさせて頂いてるんですが、本当に感情移入しやすいので、物語で泣いたのは本当に初めてでした。臣と岩ちゃんのキャラ本当に大好きでした。感動するお話をありがとうございました！！！これからもNEEさん、応援してます ♪ (2016年8月14日 1時) (レス) id: 9ddc573c34 (このIDを非表示/違反報告)
NR - ズット読ませてもらってました！！名前変えたので覚えてもらえてないとは思いますが…すごく主人公ちゃんの気持ちがわかります！ダメなのわかってるのに目で追ってしまうー私も経験済みでした。見てない、気にしてないふりしなかまらガッツリ気になってるー止められませ (2016年8月1日 1時) (レス) id: 6fe09feffd (このIDを非表示/違反報告)
NEE(プロフ) - maman727さん» こちらもコメントありがとうございます！不倫だめなんですけど、わかってるんですけどねぇ。。確かに岩ちゃん離婚はしなさそうですね！ホラーですしね(笑) (2016年3月3日 9時) (レス) id: 7b2f44dc73 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：NEE
| 作成日時：2015年12月4日 0時
