佰伍拾 ページ8
五条side
A「………じゃあ、なんで
私を高専に入れたの…?
目的はなに…?」
怯えたように、瞳を潤ませて
少し震えた声でそう言うAを見て
やっと理解した。
どうやら、自分で思っていたよりも
僕は信頼されてないらしい。
_____“目的”
………そんなの
Aが好きだから。
愛しているから。
それ以外にないのに。
でも、今の僕が
そんなことを言ったって
Aは信じないし
理解もしてくれない。
彼女からすれば、僕は
憎悪の対象を
わざわざ傍においている物好きで
しかも、その憎悪を否定する
変人なんだから。
…でもそれも
仕方のないことかもしれない。
傑に聞いた話だと
Aは引き寄せた呪霊に
目の前で家族を殺されて
それを理由に
村人に殺されかけたそうだから。
残酷な世界が与えた
悲惨な出来事が積み重なって
彼女の心を歪めてしまったんだろう。
傑に、「殺して」と
懇願するほどに。
…あの夜に、その場にいたのが
傑じゃなくて、僕だったら。
Aは僕に
同じことを頼んだのかな。
頼んだとして
僕は傑と同じことをしたのかな。
何度も何度も、そう考えた。
そしていつも、同じ答えに辿り着く。
……もしあの時
あの場にいたのが僕だったら
Aはきっと、何も言わなかった。
ただ、呪霊にやられたとか
下手な嘘を吐いて、誤魔化して
何事もなかったかのように
硝子の治療を受けていた。
Aが死を懇願したのは
それが傑だったから。
Aと同じ、迷いをもっていた
傑だったから。
僕は所詮、僕でしかなくて
傑にはなれない。
………でも、いや、だからこそ
Aには、今の僕を見てほしい。
傑でも、昔の俺でもなくて
今のこの、五条悟を。
「………目的?
それは、Aが自分で見つけてよ。
分かるまで、僕の傍で
僕のこと見ててよ。」
…それで、目的が分かったら
聞かせてよ。
Aは、どうしたいのか。
243人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時