佰肆拾玖 ページ7
五条side
「帰ろう、A。」
そう言って手を引くと
Aは抵抗するように
その場に留まった。
そして、ただそっと、首を横に振る。
あの頃と、同じように。
A「……私は、呪術師にはなれない。
半分呪いだし…
それに、傑を…悟に殺させた。」
Aが知るはずのない
この先も知らなくてよかった事実を
口にする。
「………硝子に聞いた？」
その問いに、また無言で頷く。
硝子のやつ…。
まぁ、最悪のタイミングで知られたり
第三者が書いた偏見まみれの報告書を
読まれるよりは
よかったのかもしれない。
それに、妙に賢くて
妙に勘がはたらくAのことだ。
記憶を取り戻したことと
僕が迎えに来たことを合わせて考えれば
簡単に想像がついてしまうだろう。
でもAは、真実を知ったことで
傑が呪詛師になったことも
僕が傑を殺したことも
全部、自分の所為だと思い込んでる。
僕を目の前にして
罪悪感にまみれた表情を浮かべている。
…そんな顔、させたくないのに。
「………あいつは、自分の意思で
自分の判断で、生きる道を決めた。
傑が人に流されるような
奴じゃないことくらい
分かってるでしょ。
Aがいてもいなくても
傑は同じ道を選んださ。
だから、Aのせいじゃない。」
こんな言葉が、彼女の傷の癒しに
ならないことくらいは分かっている。
でも、それでも伝えないと
Aは僕から
離れて行こうとするばかりだから。
手を取って、真っ直ぐに目を見て
伝える。
昔から僕を
よく見ていてくれたAなら
この瞳に嘘はないって
信じてくれるはずだから。
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作者名：るびー | 作成日時：2024年2月15日 9時
