佰玖拾 ページ49
Aside
この世の全てを
一体何を欲しているのか
皆目見当もつかないけど…
雀の涙以下ほどだとしても
お礼をする機会ができたことは嬉しい。
明日、伏黒くんとご飯を食べた後にでも
悟が喜びそうなものを
探しに行くことにしよう。
五条「…あっ!そういえば…
恵と、キスしたんだよね?」
「………っ…!」
あまりにも唐突に
忘れかけていた愚行を掘り起こされ
危うく飲んでいた紅茶を
カップに戻すところだった。
また人の過ちをからかう気なのかと
少し睨むようにして悟を見る。
でも、その安易な予想に反して
相変わらず綺麗な悟の瞳は
茶化すことも、怒ることもせず
ただ真剣に、私を見ていた。
心の中を覗き見るような目に
捕らわれているうちに
悟は私の手から
紅茶のカップを攫っていった。
五条「………どうだった?」
「…っ?なにが…。」
五条「恵のキスは…
僕のと、どう違った?」
流れるような動作で
細くてしなやかな指を絡め
瞳を動かすだけでは逸らせないほどの
強い視線を向ける。
そうやって全身で
“逃がさない”という意思を
伝えてくる。
それをされると私は
まるで暗示にかかったように
まんまと動けなくなる。
気が付けば
床に敷いたラグに背中が当たって
晴れた日の空と見間違うほどの碧が
二百度の視界を埋め尽くしていた。
五条「前に…
僕の手の形、覚えてるって言ったよね。
……なら、この唇も、この舌も
五感全部で覚えて。
僕以外の誰も
Aに触れるのを許さないで。」
その意味を理解するより先に
後頭部ごと床に押し付けるような勢いで
唇が重ねられた。
少し痛いくらいに強く握られた手から
どちらのものかも分からない
乱れた脈拍が伝わってくる。
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作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時