佰捌拾漆 ページ46
伏黒side
卑怯な手を使った
罰が当たったのかもしれない。
だが、このままでは俺は
Aに男として見られないどころか
人として頼ってもらうことすらできない。
後者の点において、今の時点では
五条先生に完敗している。
あの時Aは
呪力を奪っていいと言ったのが
俺だと認識していれば
きっと、断っていたんだろうから。
柔らかな笑みを浮かべながら
『ありがとう、でも大丈夫』
…なんて、大嘘を吐いて。
頼られる五条先生と
頼られない俺の差は、主に三つ。
年齢と、強さと、付き合いの長さだ。
客観的な肩書きで
人を判断しないAは
年齢や術師としての強さで
人との距離をはかったりしない。
そんなAからの信頼を得るために
今、俺がすべきことは
先生と過ごした年月を埋めるくらい
密度の高い時間を共有すること。
「…じゃあ明日、
美味い飯でも食いに行こう。
この件は、それでチャラってことで。」
だから、俺に対する
Aの罪悪感を利用して
デートの約束をこぎ着けた。
狡くても、卑怯でも
Aが手に入るなら、それでいい。
元々俺は、
不平等に人を助けるような人間だ。
今更綺麗さを求めたところで
それは俺じゃない。
それに、着飾ったところで
Aならそれを
見抜いてしまうだろう。
人の好意には鈍感なくせに
変なところで敏感すぎる、Aなら。
A「…うん、分かった。」
Aは、あえて深く訊くことはせず
控えめにふわりと微笑んだ。
たったその笑顔ひとつで
心に刺さった刃のことなんて忘れて
簡単に溶かされてしまうのも
片想いの恐ろしいところだ。
243人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時