佰捌拾肆 ページ43
家入side
私自身ですら、少し驚いたくらいだ。
Aからすれば
相当意外だったのだろう。
私から、“友達”という言葉が
出たことが。
ポカン、という文字が
頭の上に見えそうなほど
表情がその心情を描いている。
次第に、それは
戸惑ったように変わって
徐々に隠し切れない笑みが
溢れていった。
私も五条と同じように
夏油の一件を、Aのせいだなんて
思っていないことが伝わったのだろう。
A「……うん。
ありがとう。」
そして、やっと
聞きたかった言葉が聞こえた。
昔に比べると
随分と表情が豊かになったものだな。
あのまま村に居れば
こんなにも愛らしい笑みを
浮かべることなど、なかっただろう。
五条の存在は、少なからずAに
いい影響を与えているらしい。
あの異常なまでの執着には
呆れるが。
……AもAで
少しくらいおかしいとは
思わないのだろうか。
首にこんな傷を付けられても尚
平然としているAの方が
むしろ異常だ。
A「………ねぇ、硝子
点滴終わったら
部屋に戻ってもいい…?」
まだ申し訳ないという気持ちは
拭えないのか
Aは遠慮がちに
そう訊いてくる。
十年間の想いを
拗らせた男のマーキングなど
気にも留めていない様子で。
そして
呪いがこもった噛み跡の意味にも
気付かずに。
そんなAが
五条をどう思っているのか
それをどう表現するのか
少し気にはなったが
その好奇心を満たすのは
まだ先になりそうだ。
「…いいよ。
大人しくしてるならな。」
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作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時