佰捌拾参 ページ42
家入side
五条「んじゃ、Aのことよろしくね。
…あ、首のそれは治しちゃ駄目だから!」
ボロボロのAを抱えて
飛び込んできたと思えば
ヒラヒラと手を振って
颯爽と消えていく五条に
はぁとため息を吐く。
Aの首に残された噛み跡が
何ともまぁ痛々しい。
まったく…
病人の怪我を増やす馬鹿が
どこにいるんだ。
強すぎる支配欲と独占欲も
考えものだな。
呆れて出そうになった
二回目のため息を
何とか喉の奥にしまい込む。
ちらりと、
ベッドに横たわるAを見て
そういえば、ここにももう一人
筋金入りの馬鹿がいたな、と思い出す。
Aが特級になったことは
生徒たちからの話で知っていた。
だがAは、
一度も医務室には来なかった。
実力に見合わない特級案件となれば
大怪我では済まないことの方が
多いだろう。
しかも、Aは反転術式を
使うことができないというのに。
だが、それでもAは
一度だって
私の治療を受けには来ない。
私を、頼ろうとしない。
………思えば、昔からそうだ。
昔からAは
こちらが手を差し伸べれば伸べるほど
強く一線を引いて
遠ざかっていくようなところがあった。
_____『ごめんね、硝子。』
見るに見かねて
無理やり手を引いても
その口から出るのは
感謝ではなく謝罪。
それを少し
寂しく感じるようになったのは
いつからだろうな。
「………少しは頼れ。
…友達だろ?」
おかげで気が付けば
そんならしくない言葉を吐いていた。
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作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時