愛という名の呪いを【五条悟】肆 (ページ5)

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佰肆拾漆ページ5

五条side

「………っ…

A…？」

久しぶりの太陽に目を眩ませながら
自販機で買ったココアに
口を付けようとした時だった。

高専の結界から出ていく
Aの呪力の気配がした。

……まさか、目が覚めた…？

深く考えるより先に
身体が動いていた。

地面に落ちた缶も
跳ねた中身で汚れるズボンの裾も
どうだっていい。

ただ、がむしゃらに
愛しい彼女を追った。

…会いたい。

…声が聴きたい。

あの美しい太陽のような瞳を
僕の瞳の空に宿したい。

長い間、日に日に募らせて、拗らせて

いつの間にか、錆びついて

心から離れなくなったこの気持ちを
愛と呼ぶのなら

それはもう、君が僕にかけた呪いだ。

だから………責任とってよ、A。

人混みに紛れることがないほど
美しいボルドーの髪に
あいつの逞しい背中が重なる。

あの時は、引き留められなかった。

説得できなかった。

でも、もう同じ過ちはおかさない。

僕の呪力に気付いているはずなのに
背を向けて歩き続けるAの腕を引いて
しっかりと抱きしめた。

「………目、覚めたんだね。

よかった…ほんと、よかった。」

筋肉も、脂肪も落ちて
さらに細くなった身体でも

ちゃんと、温かい。

ちゃんと、鼓動が聞こえる。

一カ月前の
あの冷たさと恐怖を埋めるように
Aの生を刻み込む。

……君が、同じ世界で生きている。

それだけで、こんなにも
満たされた気持ちになるなんて。

僕もやっと、悪夢という名の眠りから
覚めたようだった。