佰捌拾壱 ページ40
五条side
これは、思いがけずいいことを聞いた。
Aが僕以外の奴と唇を交わして
しかも首筋に挑発めいたマーキングを
された事実は変わらない。
でも、恵だから
それを許したんじゃなくて
僕だと思ったから
受け入れたとなれば
同じ事象でも
その認識は大きく変わる。
“僕だから”
うっとりするほど
甘美な響きを持つその言葉に
口角が上がるのを抑えきれない。
「なんで、恵はダメで…
僕ならいいって、思ったの？」
この問いに
Aはどう答えるのかな。
恵にはない、僕への特別な感情を
どう表現するのかな。
まだ、それを愛と呼ぶには程遠いけど
Aの中での僕の位置づけが
変化し始めていることは確かだ。
A「……ごめん、
分からない…。」
口ではそう言っていても
心の中に、それまでには無かった感情が
生まれ始めていることに
きっと、A自身も気が付いてる。
あとは、それが愛だと認識できるくらい
大きくなる日を待つだけだ。
…いや、待ってなんかいられない。
だって、僕はもう
A以外の愛し方は分からないから。
一秒だって早く、
君からの愛を独占したい。
A「………ごめん…。」
うわ言のようにそう呟いた直後
Aは力なく、僕の胸に倒れ込んだ。
支えるのに力を必要としないほど
華奢な身体は
とうに限界を超えていたらしい。
青白さの中に混じる赤みと
熱く浅い呼吸で
彼女が発熱していることを知る。
「…お疲れ様。」
とりあえず今は
硝子のところへ行かないと。
それから、明日と明後日くらいまでの
Aの任務を代わりに片付けて
上の連中に適当に嘘でも吐いて
Aの激務を何とかしよう。
僕と違ってAはちゃんと疲れるし
ちゃんと頑張っちゃうし
ちゃんと無理をしてしまうから。
宇宙でたった一人、そんな君だけは
他のすべてを犠牲にしてでも
僕が守ってあげる。
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作者名：るびー | 作成日時：2024年2月15日 9時
