佰漆拾玖 ページ38
五条side
A「ま、待って…！」
Aの静止の声を無視して
とりあえず恵が付けた跡を上書きする。
………あーあ、ムカつく。
まさか恵に先を越されるなんて
思ってもみなかった。
新しい印を付ける隙間なんて無いくらいに
この白い肌を、僕の跡で
埋め尽くしておけばよかった。
煮えくり返る嫉妬心を治めるには
跡なんかじゃ到底満足できなくて
気が付けば首筋に噛みついていた。
A「ぃっ…！」
Aは小さな悲鳴を上げて
身体を震わせる。
少し離れてAの顔を見ると
その真紅の瞳を少し潤ませて
戸惑ったように僕を見つめていた。
…あぁ、この顔はきっと、
僕しか知らない。
そう思うと、ほんの少しだけ
独占欲が満たされる。
でも、まだまだ全然足りない。
寮に連れて帰る前に
この首を歯型で埋め尽くして
僕しか知らない表情と声を堪能したい。
そんな欲望を制するかのように
Aの小さな手が、僕の口を塞ぐ。
A「…っ…ねぇ、昨日…っていうか、
今日の夜中…くらいに、
高専で、私と…会わなかった…？」
「………え？」
あまりにも突然で
意味不明すぎる質問に
思わず固まる。
だって僕は、やっとの想いで
会える時間を手に入れて
たった今、飛ぶようにして
ここに来たんだから。
昨日？今日の夜中？
その頃はまだ任務先で、
東京にすら居なかった。
そもそも、夜中だろうが何だろうが
Aに会えるなら
すぐにそうしてるって。
「会ってないけど…。」
そう答えると
Aはさっきの僕みたいに
ピシッと音が聞こえそうなほど
目に見えて固まった。
そして、睡眠と栄養不足で
青白くなった肌をさらに青くして
俯いた。
A「…………。
やっちゃった…。」
「………えっ！？
なに！？ なにを…！？」
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作者名：るびー | 作成日時：2024年2月15日 9時
