佰漆拾肆 ページ33
伏黒side
…いや、ちょっと待て。
思いがけず会えたことは嬉しいが
寮とはいえ共有スペースで寝るとか
あまりにも警戒心ってもんがない。
恐らく自室に辿り着く前に
ここで力尽きたんだろうが…。
Aの寝顔を見つめていると
最初に見つけたのが俺でよかったと
心底思う。
少し開かれた
程よい弾力を感じさせる唇は
触れたいという衝動を
駆り立てる上に
制服はボロボロで
所々、白い柔らかそうな肌が
露わになっている。
抑えるべき欲求が暴走しないように
着ていたジャージの上着を脱いで
とりあえず被せておく。
そして、重力に従って流れた
ボルドーの髪を、そっと耳にかけると
Aはゆっくりと目を開けた。
明らかに疲れ果てて
泥のように眠っているところを
起こしてしまったのは悪いが
こんなところで
寝かせるわけにはいかない。
「…大丈夫か?」
完全には覚醒していないのか
Aはぼんやりとしたまま
返事をしない。
…これは、自力で部屋まで行くのは
無理だろうな。
意識を取り戻した直後よりも
日々の激務で
さらに細くなったAの身体は
大して力を入れなくても
簡単に持ち上がった。
到底人の重さではなく
生きていることすら
疑いたくなる程だった。
A「………呪霊、食べないと…。」
そして今度は
寝言にしては物騒なAの言葉に
耳を疑う。
呪霊を、食べる…?
祓うではなく、食べる。
Aの部屋に向かって
歩いているうちに
それは術式の話だろうと
解釈できた。
Aの術式は、相手の呪力を奪い
それに適応することで
攻撃を無力化するもの。
自分の呪力が枯渇した場合に
手っ取り早く
回復する手段としても使える。
つまり今のAには
次の任務を遂行できるほどの
呪力は残っていない。
そして、
自然回復を待っていられるほどの
時間もない、というところか…。
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作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時