佰漆拾弐 ページ31
Aside
分かっていた。
これは全部、
任務という名の処刑台だって。
瀕死になりながら
戦って、祓って
適当に弱い呪霊を食べて
呪力を回復させて
また次の任務に向かって
戦って、祓って…。
その繰り返し。
もう何日も
生きるための食事と睡眠を
放棄しているせいで
身体の限界が近いことは分かっていた。
でも、それでも
逃げるわけにはいかない。
だって…半分呪いの私に
できることは、これくらいだから。
伊地知「…お願いです。休んでください。
このままでは、
本当に死んでしまいます。」
任務の帰り兼
次の任務へ向かう車の中で
相変わらず気疲れした表情の彼が
静かにそう言った。
久しぶりに会った伊地知さんにも
気が付かないほど
私の目は、
よく見えていないらしい。
開いているのか、閉じているのかも
分からないくらい、瞼が重い。
「…いいんです。
それで、誰かの未来が救われるのなら。」
我ながら、
綺麗事を吐いていると思う。
呪霊の討伐に限らず
事件・事故を未然に防ぐことは
事後に対処することよりも重要で
価値があることのはずなのに
何も起こっていないから
自分の行動が誰かを助けたという
確証はない。
何も起こっていないから
感謝されることも
称えられることもない。
それ故に、これは必ず誰かの
役に立っているはずだと
自分で自分を慰めることでしか
やりがいを感じられないなんて
…皮肉なものだ。
でも、何もしないで死ぬよりは
何かをして死ぬ方が、ずっといい。
呪われた私の生の終わりに
少しでも価値がある可能性を
残しておきたいから。
243人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時