佰肆拾陸 ページ4
家入side
開けた窓から入った風が
綺麗な赤髪を撫でていく。
離れた年月と距離を刻み込むように
伸びたその長さが
彼女を大人にし
孤独にしてしまったんだろう。
A「………硝子、ありがとう。
今回も…昔も。」
あの時言えなかった別れの挨拶を
十年越しに告げるかのように
Aは笑った。
その笑顔の儚さと言ったら
花や蝶の比ではない。
引き留めようと安易に手を掴んだら
そのまま消えてしまいそうだ。
………五条。
またAは
お前の元から去って行くぞ。
物理的な距離を埋めるのは簡単でも
心理的には難しいものがある。
”Aのせいじゃない”
”ここに居ていい”
そんな言葉の一つや二つで
Aは五条の隣を選ばない。
…なんだか、不憫だな。
どうしようもなく。
「………A、一つ言っておく。」
扉からではなく
わざわざ窓から出て行こうとするのは
ここが自分の居場所ではないと
そう感じているから。
五条が必死に築いてきた
Aと同じ世界で
生きていくための場所を。
それは、あまりにも…。
「…五条は、本気でお前を心配していた。
毎日毎日
ろくに眠りもしないで傍にいた。
…その意味を、よく考えろ。
五条から逃げるな。向き合ってやれ。」
ただ、五条のAへの想いが
少しでも伝わればいいと思った。
Aが高専に来てからの五条は
夏油がいた頃みたいに
楽しそうだったから。
友人として、二人の幸せを願うのは
当然のこと。
…それに、Aは分かっていない。
あいつがどれだけ、お前を想っているか。
高専から離れたところで
五条は、地位も権力も
呪術界さえも捨てて
Aを選ぶだろう。
…もう逃げられないんだよ、A。
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作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時