佰漆拾壱 ページ30
五条side
…昔から分かっていることだけど
いつもそれは
忘れたころにやってきて
ご丁寧に思い出させてくれる。
所詮幸せなんてものは
ただの一時に過ぎないってことを。
特に、この腐った呪術界では
そうだということを。
Aは、目を覚まして
一週間も経たないうちに
上層部から特級に任命された。
いやいや、どう考えてもおかしい。
確かにAの呪力の総量は
憂太に匹敵するほどだけど
鷲見の魂による制御で
A本人が操作できる呪力は
多く見積もっても一級程度しかない。
そう抗議しても
保守派のジジイどもは
聞く耳を持たない。
間違いなく、体よくAを
呪術界から…
いや、この世から抹殺するためだろう。
悠仁の時と同じだな。
おかげでAは
実力に見合わない激務を強いられて
一応立場上は生徒だってことを
忘れそうになるくらい
昼夜を問わず
任務に駆り出されている。
そして、これも戦略のうちなのか
僕に割り当てられる任務は
数日を要する遠出のものが
ほとんどになった。
それも、放っておくにはヤバくて
他の奴に任せるには
荷が重すぎる案件ばかり。
それに…
僕がこの任務を投げ出せば
それは間違いなく
Aに引き継がれる。
僕が任務を放棄することは
Aの死を意味する。
だから、指示通りに
遂行せざるを得ない。
………あーあ、もう何日
Aの顔を見てないんだろ。
電話にも出てくれないし
メールすら返ってこない。
会いたくて、声が聞きたくて
触れたくて、堪らない。
どうすれば、一刻も早く
任務を片付けて
Aに会いに行けるか
毎日毎日、そればかり考えてる。
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作者名：るびー | 作成日時：2024年2月15日 9時
