佰漆拾 ページ29
五条side
いつもの僕なら
キスしていい？なんて
中高生の恋愛みたいな確認はしない。
でも今日は、
Aを困らせてみたくなった。
二人だけで
共有していればいい思い出を
簡単に他人に話そうとした罰として。
それに、Aが
余裕のない表情を浮かべて
動揺するのは、僕の前だけだから
独占欲を満たすのには
ちょうどいい。
A「…………すごいね。
あんなことがあったのに…
悟の瞳、綺麗なままだ。」
でもまさか、至近距離でそんなことを
言われるなんて、思ってなかった。
…まったく。
これだから、Aには敵わない。
君が綺麗だと言って見つめる
瞳の輝きの源は、君自身だってことに
いい加減気づいてくれないかな。
たった一人の親友が
呪詛師になっても
その親友を
この手で殺すことになっても
僕が僕のままでいられたのは
Aが居たから。
どこかで生きているAに
また会いたかったから。
そのためなら、何だってできた。
腐った蜜柑どもの言う通りに
任務をこなして、地位を築くことも
苦じゃなかった。
…それくらい好き。
それくらい、愛してる。
もっと困らせるつもりだったのに
結局は我慢できずに
唇を奪っていた。
だって、確信したから。
僕はAを
恨んでなんかないってことに
ようやく気付いてくれたって。
恐怖が無くなって
抵抗を緩めた身体と
その和らいだ瞳を見れば分かる。
肝心な僕の気持ちには
気づいてないみたいだけど
今日のところはこれで
良しとしようかな。
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作者名：るびー | 作成日時：2024年2月15日 9時
