佰肆拾伍 ページ3
Aside
家入「………死んだよ。
五条が殺した。」
淹れたばかりの
熱いコーヒーを飲みながら
硝子は淡々とそう告げる。
その答えに
どこかで納得している自分がいた。
記憶が戻ったことで
私自身が証明してしまっていたから。
傑の、死を。
硝子や悟に負わせた、消えない傷を。
………でも、これで
私の心は決まった。
私は、呪われた皇一族の末裔で
半分呪いのような存在。
身勝手な言葉で、傑を呪詛師にして
悟に親友を殺させた。
そんな私が、呪術師?
しかも、悟の生徒として?
…笑えない冗談に、笑えてくる。
私には、ここにいる資格なんてない。
呪術師を名乗る資格なんてない。
長い眠りで伸縮を忘れた筋肉を
無理やり動かして
血が出るのもお構いなしに
乱雑に点滴を外す。
家入「………A…。」
止めても無駄だと分かっている硝子は
相変わらずだ。
少し離れたところで
興味が無さそうにしているのに
少し複雑そうな表情を浮かべている。
その距離感が
彼女のアイデンティティなんだろう。
私を助けたのも、きっと
それが仕事だから。
…硝子のそういうところ
昔から変わらなくて、素敵だな。
そんな彼女に背を向け
久しぶりの歩行に
悲鳴を上げる身体を無視して
壁際まで歩いて行く。
古びてガタついた窓を開けると
強い風が医務室を吹き抜けた。
なびく髪からは
シャンプーの香りがした。
そこから漂う硝子の優しさに
包まれるようだった。
「………硝子、ありがとう。
今回も…昔も。」
ずっと、私の怪我を
治してくれてありがとう。
…さようなら。
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作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時