佰伍拾玖 ページ18
Aside
悟は、昔から分かりやすい。
そしてそれは、
一人称や口調を変えたとしても
やはり変わらない。
今も、人の心情はこんなにも
空気に伝染するものなんだろうかと
少し恐ろしくなるほど
不機嫌が滲み出ている。
でも、勝手に部屋を出たのは事実だから
監視役の立場にある悟が
怒るのも無理はない。
どう機嫌を取ろうかと考えているうちに
悟はもう目の前に立っていた。
ただでさえ高身長な上に
私はソファに座っているせいで
圧を感じて、顔を上げることすらできない。
誰も、何も話さない嫌な沈黙が
みんなの憩いの場であるはずの空間を
支配する。
巻きこんで申し訳ない、
そう思って伏黒くんを横目で見ると
彼は私ではなく
じっと、悟を見つめていた。
………すごい。
それぞれの視線を辿ると
きれいな三角形が描けるではないか。
………なんて、気まずさのあまり
馬鹿なことを考えていると
ソファに座った姿勢のまま
悟に軽々と持ち上げられていた。
五条「もー。
部屋で大人しくしてないとダメでしょ。」
目の奥は一ミリも笑っていないのに
明るい口調でそう言われて
背筋がゾクリとする。
閉じ込めるように、肩に添えられた手に
それが伝わっていないことを祈る。
離さない、と言わんばかりに
力を込めて肩や膝裏を抱え込む、
その逞しい腕に
逃げられないことを
改めて思い知らされる。
悟の身体越しに、伏黒くんに
『ごめんね』と口パクで伝えると
彼は無表情のまま、右手を軽く挙げた。
『気にするな』とも、『ご愁傷様』とも
取れるそのジェスチャーを見ながら
私は部屋へ強制送還された。
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作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時