佰伍拾漆 ページ16
伏黒side
無関心という冷たさの中にも
温かさを感じるのは、どうしてだろう。
知れば知るほど、皇Aという人間が
分からなくなっていく。
…だからこそ、惹かれてしまう。
まだ寝ていた方がいいと、何度言っても
Aは大丈夫だと笑って
ソファに腰かけたまま動かない。
そういうところは、頑固なんだな…。
病人を無理やり引きずっていくのも
このまま放っておくのも気が引けて
諦めた結果、Aの横に腰かける。
いつ、誰が、明日を失うかも
分からない世界で
Aが生きていてくれて
目を覚ましてくれて
素直に嬉しいと思った。
Aが生者の世界から
居なくなるという
悪夢からの解放。
そして、誰よりもそれを願っていた
一人の男を思い出す。
「…………五条先生には、
もう会ったのか?」
Aが意識を失ってからのあの人は
それはもう酷い有様だった。
まだ出会ってそこそこの
虎杖や釘崎にも分かるくらいに。
授業はいつも以上に適当な上に
任務はすべて放り出すせいで
それを回された七海さんや冥さんは
困り果てていた。
だが、当の本人は
そんなことは気にも留めず
いつ何時も、医務室に籠って
Aの手を握って
その寝顔を見つめていた。
快晴の空のような瞳を
今にも雨が降りそうなほど、曇らせて。
そんな、現代最強呪術師の最弱な姿に
誰も、かける言葉を
見つけることはできなかった。
A「…うん、少し前まで一緒にいた。」
そうやって、
生きるという行為を放棄してまで
Aの傍から離れようとしなかったんだ。
当然、真っ先にAの視界に
入るに決まっている。
…だが、少しだけ、期待していた。
目を覚ました時、誰よりも早く
その美しい瞳に映るのが
俺だったらいい、と。
243人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時