愛という名の呪いを【五条悟】肆 (ページ15)

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佰伍拾陸ページ15

伏黒side

自覚して、受け入れることで
むしろ清々しい気持ちになった。

そんな自分への、少しの恐怖さえも
心地いいくらいに、Aが好きだ。

その瞳に宿る、
見た目に似つかない芯の強さも

人の本質を見抜く鋭さも。

それは、以前と何も変わらない。

だが、その真っ直ぐすぎる目に
見惚れているうちに

ある一つの罪悪感を思い出した。

一カ月以上前のこと、…なんて理由では
時効にはならないし

そんな卑怯な手を使うつもりもない。

「………悪かった、A。」

だからはっきりと、謝った。

A「…どうして、謝るの？」

ただ心配そうに、俺を見つめるAが
怒るところなんて、想像もできない。

仮にできたとしても
それが現実になることはないだろう。

…それを分かった上で謝るのは
やっぱり卑怯だな。

「約束、破って悪かった。」

＿＿＿＿“ もし、明日の夜までに

私が戻ってこなければ

私は呪術師をやめて
実家に戻ることになったと
皆さんに伝えてもらえませんか。 ”

…あの時、俺は

Aの気遣いを台無しにして
五条先生に事情を話し、助けを求めた。

Aとの約束を果たさないことよりも
Aが居なくなってしまうことの方が
嫌だったから。

そんな、自分勝手な理由で。

詳細を語らなくても
Aには謝罪の意味が分かったらしい。

ふっと表情を和らげて
少しだけ笑った。

A「気にしてないよ。

伏黒くんの判断に
私が干渉する権利はないから。」

………だが、そんな彼女の本心に
一瞬心が硬直する。

突き放されたようにも感じるその言葉が
まとわりついたように離れない。

Aは怒るどころか
許すことさえも放棄した。

そこには、『無』以外の情は
存在していない。

………あぁ、そうか。

Aは…

善人か、悪人か、なんて
そんな単純な尺度で測れる人間じゃない。

その域にすら、達していない。

Aは、他人にも、自分にも
興味がないんだ。

………優しさと冷酷さは、紙一重。

Aの優しさの根源は
自他への無関心なんだ。