佰伍拾伍 ページ14
伏黒side
A「………伏黒くん…?」
不思議そうに、控えめに
俺を呼ぶその声が
やけに耳元で聞こえたことで
一気に我に返る。
「悪い………。」
つい、衝動的に抱きしめていた。
俺より何倍も狭い肩幅に
添えたままの手を
放すタイミングを失った。
そこでようやく、違和感に気が付く。
………触れている。
俺の手が、Aの肩に。
これまでずっと、五条先生しか
直接触れることができなかったはずの
Aに。
「………呪力、
コントロールできるように
なった…のか?」
死の傍に立つことが
能力を覚醒させるというのは
よくある話だ。
それは、瀕死の怪我を負い
長い間意識不明だったAにも
平等に起こりうる可能性。
だが、論理的には説明がつかない
違和感が残存する。
何かが………あるいは、何もかもが
それまでのAとは違っていた。
A「………記憶が戻って
呪力コントロールの仕方も
思い出したの。」
そう語るAの
話し方も、雰囲気も…
やはり、前とは違う。
以前よりも、ずっと大人びて
年相応の女性に見えた。
それを目の当たりにすると
記憶が人を形成しているというのも
納得だ。
だが、記憶を取り戻して変わっても
少しも変わらない、Aへの想い。
それは、外見や中身に関係なく
ただ「皇A」という
一人の人間に対して
盲目的な恋心を抱いていることを
証明するには十分だった。
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作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時