佰伍拾肆 ページ13
伏黒side
…何となく。
ただ本当に、何となくだ。
広いソファに腰かけようとか
それ以下の動機で
何となく
共有スペースに向かっていた。
だが、そこにいた先約の姿に
さっきまでの「何となく」が
運命に変わるを感じた。
「A………………?」
………なんで、ここに。
Aは、家入さんのところに
いるはず…だよな。
いや、そもそも………
意識不明のはず、だったよな。
A「………伏黒くん…。」
他人の空似か……?
だが、そう呟いて
俺を見つめるその人は
正真正銘、Aだ。
溺れてしまいそうなほどに
深く美しい赤髪と
目が眩むほど鮮やかな
紅い瞳をもつ人間なんて
この世でA以外に存在しない。
…目が、覚めたのか。
ようやくそれを理解した途端
急に膝の力が抜けて
その場にへたり込んだ。
A「伏黒くん…っ?」
病み上がりで筋力も体力も落ちて
ヘロヘロなくせに
飛ぶような勢いで駆けてきて
「大丈夫?」なんて
病人の台詞ではない言葉を俺にかける。
「………こっちの台詞だっつーの…。」
でもそんな
変わらないAらしい言動が
より一層、俺を安心させる。
本当に、目が覚めたんだと
生きているんだと、実感させてくれる。
気が付いたら
勢いよくAを抱きしめていた。
これが、願望が生み出す幻覚だという
最後の残酷な可能性を、排除したかった。
服越しに伝わる体温と
呼吸に合わせて上下に微動する身体で
これが現実であることを確信する。
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作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時