佰肆拾肆 ページ2
家入 side
「………記憶、戻ったのか。」
五条から、Aの記憶は
戻っていないと聞いていたが…
おそらく長い眠りの中で
過去を辿ってきたのだろう。
最後に会ってから十年以上も
経っているというのに
外見も口調も変わった私を
瞬時に認識するAは
相変わらずだな。
おかげで私にも、一気に昔の記憶が
蘇るような感覚がした。
A「………一つ、訊いてもいい…?」
開いたばかりの目を伏せて
Aは遠慮がちに、言葉を発する。
まるで生きていることを
後ろめたいような、その態度に
これからされる質問を
何となく察した。
A「…………傑は、
今、どうしてる…?」
予想通りのその質問には
以前からどう答えるべきか
ずっと考えていた。
そして、その答えは既に出ている。
あまり役に立ってほしくはない
準備だったと思いながらも
過去の用意周到な自分に感謝する。
長すぎる沈黙が
取り返しのつかない誤解を
生むことだってあるから。
「………死んだよ。
五条が殺した。」
今のAには
毒にしかならない感情を
なるべく乗せず、淡々と答える。
五条には口止めされていたが
調べれば簡単に分かることだ。
真実を隠されたと知った方が
Aは傷つき、一層自分を責めるだろう。
Aは昔から、そういう奴だ。
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作者名:るびー | 作成日時:2024年2月15日 9時