mission 56 ページ6
.
大ちゃんの夢は気になったけど、当てずっぽうで言っていけば当たりそうだったから迫るのは止めておいた。
それより。
「伊野ちゃんってさぁ」
「んー?」
学校から真っ直ぐ帰ってきたけどもうすぐ5時。
時間って早いなぁ、と呑気に考えながら鞄をベッドに投げ出し伊野ちゃんの背中に問いかけた。
まだ仕事中らしい。
キーボードをカタカタ言わせながら俺に答えてくれた。
「やっぱごめん……、仕事終わってからにするわ」
「なによ、そんなに引き延ばされると気になるんだけど」
忙しいのにこんな下らないこと聞くの申し訳ないな、と思った俺に、伊野ちゃんは空かさず向き直った。
「どうせもう止めにしようと思ってたから」
「ほんと?」
「うん。で、俺がどうしたって?」
んじゃ遠慮なく。
夕食を作る時間も考えなきゃだし、渋っていてもどうせ後々面倒なことになるだろう。
意を決して伊野ちゃんに疑問をぶつけた。
「伊野ちゃん、好きな人とかいる?」
「おっと……?」
一瞬フリーズして思考停止したかと思えば、「あーそういうこと」とどこか閃いたような、納得したような笑みを浮かべた。
なんだ、嫌な予感がする。
「光にもとうとう春が来ましたかぁ」
「なんか伊野ちゃん勘違いしてない?」
「してないしてない!わーってるよ、ちゃんと。光もそういう年頃だもんなぁ。なんか親としては感慨深いもんがあるよ。そうかそうか」
「いや、なにお爺ちゃんみたいなこと言ってんだよ」
やっぱり勘違いしてたんじゃねぇか!
俺が違うから!と伊野ちゃんを止めると、妄想の世界から一旦戻ってきた。
「違うの?」
「ちゃんと最後まで話聞けよ」
「ほいほい」
「だからね?伊野ちゃんだって、好きな人とか、恋人とか。モテるっぽいし一人や二人、いるだろうと思って」
「へえ?」
聞くのが恥ずかしくなってきた俺の気も知らないで、伊野ちゃんは優雅にコーヒーを堪能している。
俺の話聞いてる……よな?
「だから、……もし、その人と結婚したいとか、そういうこと考えてたら、俺って──」
「邪魔なんじゃないか、って?」
「なんで分かるの!?」
「そりゃあね」
だって光、捨てられた子猫みたいな顔してるし。分かりやすいんだもん。
「……どうせなら犬が良かった」
「あ、誤魔化した」
「誤魔化してないし!」
肝心の俺の質問には答えてくれないくせに。
赤くなっているであろう顔を床に向け、呟いた。
.
298人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柊(プロフ) - クリスさん» コメントありがとうございます!亀更新ではありますが、これからも応援していただけると嬉しいです。ぜひ楽しんで下さい! (2021年2月17日 23時) (レス) id: 9a230f5c32 (このIDを非表示/違反報告)
クリス - とっても面白いです!更新頑張ってください! (2021年2月17日 22時) (レス) id: e4548ba768 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - 百夢叶さん» コメントありごとうございます!やる気出ました笑 (2020年5月2日 18時) (レス) id: 351dea1b4f (このIDを非表示/違反報告)
百夢叶(プロフ) - 更新待ってます!頑張ってください! (2020年5月2日 17時) (レス) id: 4a44319a0a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柊 | 作成日時:2020年1月1日 22時