mission 8 ページ8
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逃げても逃げても追いかけてくるそいつら。
1人に対して3人ってのは大人げないよ?
まともに呼吸もできないくせに、苛立ちだけが募って悪態を吐き始める始末だ。
「なんなんだよ」
人通りの多い通りに出た。
背後を見れば魔の手が迫ってきているのを感じて、止まる暇もなく逃げ惑う。
まだ6時前だっていうのに空はどんより暗くなって、辺りを見回してもネオンが走れと急かすだけ。
何を思ったか、疲れきった足は建物と建物の間に踏み入れていく。
一先ずここまで来れば追っ手は来ないだろう。
安心したからか、へなへなと座り込んでもう歩ける自信もなかった。
「どうすっか……」
本来の目的は薮を追いかけることだ。
なのに肝心のあいつは見当たらないわ、変な奴らに追いかけられるわ、で。
挙げ句の果てに制服だから、このまま残って遅くなりでもすればいつ警官に補導されるか。
「最っ悪」
空を見上げれば、一人でいることに不思議と抵抗はなかった。
今頃伊野ちゃんは何してんのかな
大ちゃんには嘘吐くようなことして、なんだか申し訳ないな……なんて。
でもそんな感情も一瞬で無くなってしまった。
不意に奥の方を見やればなにやら店があるようで。
疲れよりも好奇心が勝って、危ない橋だとわかってはいるのに、どうしても渡りたくなってしまうんだ。
ふらふらと進んで行けばやっぱりそこは子供が来ちゃいけないような場所だった。
「ホストクラブ……か」
「あれ。高校生?今から俺らといいことしない?」
「ちょっ」
どんだけナンパされれば気が済むんだよ俺!←
「ホテルでも行こうよ。ね」
yesもnoも言ってないのに腕を持たれてずるずると引っ張られていく。
男なのに抵抗してもびくともしないなんて、情けなくなる。
「離せ!いってぇ!」
「つべこべ言わずに歩け」
口調が鋭くなって、ホテル街が近づいた。
入ったら終わりだ。
その前になんとかしないと──
「おい待てごらぁ!」
警報が鳴り響くなか、咄嗟に目の前に見えた店へ逃げ込んだ。
「お待ちください。こちらはまだ開店前でして」
「いいから通して!追われてんだよ!」
「ですが──」
聞き分けの悪い店番を押し退け、地下に続く階段を駆け下りる。
追いかけてこなかったのか店番も階段を下りてきた。
「お待ちくださいお客様。そこから先は──」
カランカランッ
渇いた音が響いた先。
思いもよらぬ相手がいた。
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作者名:柊 | 作成日時:2018年10月12日 19時