mission 48 ページ48
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「ど。……ど、してっ」
「秘密」
しーっ、と唇に人差し指を当てなにかを企んでいる様子の薮。
その姿が嫌に似合っていて、一瞬のうちに全身の鳥肌が立った。
「痛い?」
「別に……普通」
「普通って笑。……初めてで普通もなにも知らないだろ」
__ムカつく。
けらけら笑っている薮の鼻を摘んで、引っ張った。
肝心のそいつはおっと、なんてよろけて顔の両側に手を突くけど。
「ならもっと……優しく、しろよ、、」
「優しくって?」
「だからっ──」
両手は顔の横に押しつけられ、両膝で腰を挟まれた。
真上から見下ろす薮の目に、はっ、と息を吸い込んだ。
「こういうこと?」
別にせがんだ訳じゃない。
そうじゃなくって、本当に。
でも、今までのとは違う味がした。
甘くて、柔らかくて。
前みたいに怒鳴られているようには感じなかった。
まるでここにいることを許してくれているみたいに。
__生きていることを、初めて肯定されたように。
「っ……ん"ん"っ」
息が苦しい。
夢心地のような空間から地獄に落とされたような感覚がした。目眩がする。
首を絞められているみたいに苦しい。
呼吸できないんじゃない。呼吸させてもらえないんだ。
「ひか、る……」
蕩けるような優しい声だった。
こんな声、二度と聴けないのだと思うと、途切れさせたくなくて。
「えっ──」
終わらせようと身を起き上がらせた薮の顎を引っ張り、俺の方から唇を合わせにいった。
驚いた薮の顔が可笑しい。
されるがままだった俺にもできるんだと証明したくて、必死に向きを変えながら、はむはむ口を動かした。
「おいっ、、ちょ、光?」
お前、キス下手だな。
唇を離されて言われた言葉は、それ。
「しょっ、しょーがねぇだろ!?」
自分からしたの初めてなんだから!
悪びれもなく言い返すと、また笑われた。
今度は嘲笑ってやがる!!
「だーかーら、俺が教えてやるって言ってんだろ?」
「そんなことされなくったって!」
「恥ずかしいのか?こんなんになっといて」
改めて言われて、急に恥ずかしさが全身を駆け巡った。
そうだ。
俺は、俺らは裸でこんな下らないことを言い合っているんだ。
「光、顔真っ赤笑」
でも、もうめげねぇ。
「じゃ、いいし」
「ん?」
「もうお前とは二度とキスしねぇから!」
啖呵を切った矢先、唐突に口を塞がれた。
「耐えられんの?それ」
__唇で。
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作者名:柊 | 作成日時:2018年10月12日 19時