mission 25 ページ25
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「まま、待って待って!」
「あいつに会いたくねぇって言ったのにっ!」
「こうでもしねぇと懲りねぇだろっ」
「そんなこと──」
「あるから言ってんの。それに、ここなら一人にしても危なくないから」
薮に洗脳されてんじゃねぇのかってくらいあいつに従順だ。
なんだよ、師弟関係にでもなってんのかよ。
それか兄弟かよ。
お兄ちゃんが怖くて従ってます、みたいな?
「あいつが教師ってこと、知ってんのかよ」
「知ってるよ。薮って名前でやってんでしょ」
だからどうした、とでも言いたげな顔。
「教師がこんな街でホストやってるって知れ渡ったら、どうなるだろうな」
「その前に誰も信じないんじゃない?光くんのことなんて」
「っ……」
脅しなんて100年早いんだよ。
逃げようとしたままの俺の手を器用に掴みながら酒を注文した。
いつメニュー見たんだよって。
「三樹矢は批判を買うかもしれない。でも光くんだって、なんでそんな街にいたんだ?って聞かれるよ」
「……でもっ」
「そしたら君はなんて答えるつもり?まさか死のうとしていました、なーんて。言えるわけないよな?」
なんでそのこと知ってんだよ!
さては薮の奴、高木にまでそのこと言い触らしてんだな?
「ね、脅すなら脅すなりに計画立てなきゃ。ここ使って」
「頭?」
高木に頭を使うなんてできるんだ。
って言ったら、デコピン100万回するよ?って笑顔だった。
……デコピンを高木が頑張って俺にしている絵を想像してつい笑ってしまった。
「ところで、家には帰らなくていいの?もう9時だけど」
「今日は、いいの」
今日は、いいんだ。
伊野ちゃんが珍しく仕事場に設計図を届けに行った。
そこでまた新たな仕事が舞い込んだらしくて、俺は一人で夕食を食べる予定だったから。
因みに伊野ちゃんは明日の午後まで帰ってこない。
いつもこの時期はなにかと忙しいんだ。
「ここで夕食を食べる気だったとか?」
「奢ってくれるんじゃないの?高木が」
「三樹矢に説教食らわなかったら、してあげてもいい」
なんだよそれ!卑怯だろ!
「って言っても、金持ってないよ俺」
「三樹矢が払うか俺が払うか。
……光くんが、体で払うか」
「冗談止せよ」
「冗談だと思うなら、やってみる?」
耳元で囁かれ、柄にもなく身震いした。
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作者名:柊 | 作成日時:2018年10月12日 19時