mission 23 ページ23
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「死ぬの止めたの」
聞きたくもなかった声に驚いて、反射的に顔を上げた。
「……最悪」
「それはこっちのセリフだ」
何しに来たんだ、薮の奴。
まさか、俺を捜して──
「……なわけ、な」
「ん？」
「なんでもねぇよ。てか来んな」
俺の横に立ってフェンスに寄りかかった薮。
グラウンドに背を向けた俺と違い、フェンスに腕を乗せて生徒を眺めている。
その背の差でさえ、嫌味に見える。
「誰かに止めてもらいたいなら、俺が止めてやるけどな」
「……は？」
「有岡、いつも心配してた。俺に相談してきたし」
「嘘……だ」
「バレてないとでも思ったかよ。俺があのボロビルでお前を見つけた時点で全部バレバレなんだよ」
「てことはっ。やっぱり、お前も」
「ん？」
可笑しいと思ったんだ。
薮があの日、俺に声をかけたことも。
薮があの日、俺を見つけたことも。
薮があの日、あのビルに来たことも。
「お前も、死のうと、してた……？」
ずっと気になってた。
なんで薮は、あそこにいたんだ？って。
「はっ。馬鹿言え」
隣にいるのが嫌になったのか、青いベンチに腰かけたそいつ。
そういうことろが、逆に分かりやすい。
「じゃあなんであそこに！」
「なんでも。ただ死のうとした訳じゃない。それは本当だ」
お前は俺とは違う。そうだろ？
そう語る薮の瞳には、光が足りない。
「じゃ、じゃあっ。……なんだってんだよ」
今度は俺の方から薮に近づいた。
薮も驚いたようで、ベンチに座った俺から少し距離を置いた。
「大人の事情。以上」
「は？……つまんな」
立ち去ろうとしていた薮の足音が止まった。
俺の呟きが功を奏したらしい。
「この世界がつまらなくなったら言えって言ったよな」
「えっと、そういう意味じゃなくって」
なんでそうなるんだ馬鹿野郎！
「やっぱり教えてやろうか、この世界を楽しめる方法」
「別に？知らなくたって充分満足してますけど」
「でも今つまらないってハッキリ言ったじゃねぇか」
「うわ、こういう奴無理」←
「ちょっ、おい！もっかい言ってみろ！」
「だから無理っつったんだよバーカ！」←
「なら強制的に聞かせてやる」
なんだなんだ、この負けず嫌いの喧嘩は。
てかこいつめっちゃめんどくせぇ！！←
「俺からのミッションな。“嘘で人を幸せに”しろ」
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作者名：柊 | 作成日時：2018年10月12日 19時
