mission 33 ページ33
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「光呼びはアウトか？」
未だに頰を摩っている薮の手が、なんだか温かく感じた。
普段は見られない困り顔も、ムードなんてぶち壊しなのに、それがまた優越感を感じさせてくれて。
無性に、泣きたくなってしまう。
「や、ぶ……」
白が目立つ首筋に手を伸ばすと、ガシッと捕まってしまった。
大人の笑みを浮かべ、子供をあやすみたいに俺を宥めるんだ。こいつは。
「ここはダメ。まだ痛いから」
「……なにがあったの」
「内緒」
含みを持たせていつもこうだ。
全部内緒にしたら、それこそ気になって仕方がないのに。
「誰かに怪我を負わされた？」
「どうしてそう思うんだよ」
「それ以外に考えられないだろ。転んでそんな傷はできない」
もう片方の手も捕まえると、両手をベッドに押し付けた。
大人はやることが強引だ。
そんな大人が大嫌いなのに、早くなりたいと願ってしまう。
世の中、矛盾だらけだ。
「それ、学校で隠し通せると思ってんの？」
「明日は元々休みを貰ってる。その後は連休だから、４日も休みがある。次に学校に行く頃には、綺麗さっぱり、跡形もない」
「でも俺は覚えてる」
「覚えてるからなんだ？」
「覚えてるから……俺は、お前が忘れてもその傷を忘れない」
「なんだそれ笑」
「だってそうすれば！……俺がここに来たことも、忘れないでいられるだろ」
あぁ、もう、自分でなに言ってんだか分からなくなってきた。
結局なにが言いてぇんだお前は。
まさに薮はそんな顔をしている。
「……ここのことなんて、忘れた方がいい」
目を伏せたそいつは、覆い被さっていた姿勢からいきなり立ち上がった。
「ちょっ、おい！」
「今日はこれでお終い。思い出にならないことを祈るよ」
いつの間にか、俺は薮に喰われる気でいた。
まるでそれが普通のことみたいに、ここに来て、薮に喰われようとしていた。
「待てよ！」
「八乙女。お前がここに来ることは、いることは、やっぱり間違ってる」
高校生なんだから、そのくらい分かるよな？
子供だとか大人だとか、人は感情で使い分ける。
じゃあ俺はどっちなんだ。
まだ子供として、生きなきゃならないのか？
「俺だって、子供でいたいわけじゃない。早く大人になりたい」
「それは、、」
「分からないよ。お前には、一生かかったって分からない」
繋がれていたはずの手が一瞬にして解けてしまった。
それに耐えられない俺はきっとどうかしてる。
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作者名：柊 | 作成日時：2018年10月12日 19時
