mission 27 ページ27
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やけに真剣な顔つきで聞くもんだから、思わず首を横に振った。
「ここに座ってて。ここならお客さんにも言い寄られにくいから」
「い、言い寄られるって」
「その時は近くのスタッフにでも助けてもらって。皆には三樹矢の友達ってことで通ってるからさ」
「と、ともっ──」
「行ってくるから。留守番よろしく」
頭をポンポンされ、顔が火照った。
子供扱いは止めてくれ。もう16だぞ?
「なになに、君が噂の光くん?」
噂、の?
高木が出て行ってからというもの、ひっきりなしに声をかけてくるホストが何人か。
「え、本当だ!割とイケメン?」
「三樹矢さんの友達もイケメンかぁ。類は友を呼ぶってやつだな」
「お前そんな諺知ってたんだな」
なんだなんだ、こいつら。
「三樹矢さんと友達って……どこで知り合うの?」
「雄也さんとも親しいよね?」
待て、待て、待て。
高木、全っ然お客さん来ませんけど!?
てか言い寄ってくんの客じゃなくてホストですけど!?
「あ、あのっ」
「指名入りましたー!」
「え、俺?俺だろ?」
「お前じゃねぇよ。雄也さんだって。今日休みって誰か言ってなかったのかよ」
「じゃあ俺入ります」
あっという間に煩い人たちは仕事に戻ってしまって、一人ぼっちになった。
言い寄られる(というより騒がれてた)のも中々の地獄だったけれど、シーンとした空間も退屈だ。
「高木、どこ行ったんだろ」
気づけばあれから20分が過ぎていた。
いくらなんでも遅い。
まさか俺を置いて……
なんて、高木なら薮に告げ口していそうだ。←
「捜しても、いいのかな」
ここに座っててって言われた。
でも、俺が行ったっていいだろ?
「だめだよ、行っちゃ。光くん、お待たせ」
「高木!?」
「しーっ。三樹矢寝てるから」
高木が帰ってきた。
眠っている薮を横抱きにしながら。
「っ、その傷」
「あぁ……気にしないで」
ソファに寝かされた薮の首筋には、何本かの切り傷が横たわっている。
高木は隠すようにそれを覆ったけど、俺はこの目でハッキリと見た。
あんなの、この仕事で出来るような傷じゃない。
「何があったの」
「……そういうのは、本人から聞くもんだよ」
「でも、見たんじゃねぇの?」
高木は店にあったガーゼで薮のそれを一々手当てしていく。
「……やっぱり、こいつには聞かないでやって」
薮を愛しそうに見つめ、スタッフに声を掛けに行った。
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作者名:柊 | 作成日時:2018年10月12日 19時