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何だろうかと眺めていれば、袋の口から彼の手に滑り出たのは、細い鎖の先に薄い紫の石が付けられたネックレスのようなもので。木漏れ日を通して淡く光る、グラデーションがかった石に、綺麗、と思わず言葉が漏れた。シーグラス、と告げられる。
小さく笑って軽く背を曲げ、こちらに体を倒した兄さんが、後ろ髪を避けて項に触れる。留めていた第一ボタンが外され、しゃら、と鎖の擦れる音がして、首元で動くその感触が少し擽ったい。
「……」
兄さんが肩越しに首裏を覗き込んでいるから、私の視線は自然と彼の肩あたりにくる。ずり上がったストールとインナーの隙間から、骨ばった肩と綺麗な鎖骨が見えて、思わず目を逸らした。彼が身動きする度に、煙草の匂いがふっと香って、何だかくらくらする。
「ん、出来た」
「……え、と」
「幹部昇格のプレゼント」
「あ、ありがとうございます」
「正直似合いそうやったから買うてきただけやし、邪魔にならんかったら使たって」
「毎日付けます」
「ははっ、それは嬉しいわ」
金具からは鎖が二本伸びていて、一本は喉の辺りをぐるりと回り、もう一本は少し余裕が持たせられていて、ちょうど鎖骨の上にシーグラスが来るようになっている。その存在感は、平生ならきっと煩わしいと思うのだろうが、彼から貰った物だと思えば寧ろ愛おしいほどで。
「……大事に、します」
シーグラスのつるりとした感触が、いつまでもその存在を主張していた。
「……お前、それどうした」
今日の夕食の席は、トントンさんに手招かれるままに彼の正面、つまりは上座に座るグルッペンさんの隣で。腰掛けるなり放たれた言葉に、私は一つ瞬きをした。
「それ、とは」
「首」
「……あ、兄様が、昇格祝いにとくださって……付けてはいけませんか？」
「いや、大丈夫だが……兄さんか、そうか」
少し離れた席で鬱先生と話していた兄さんが、視線に気づいたのかこちらを見遣る。そして、ふ、と片方の口角を上げて笑って見せた。何時になく煽るようなその笑みに、グルッペンさんの表情がぴしりと凍る。トントンさんも能面のような顔になっていて、そんなに駄目なことだったかと不安になってきた。
「Aちゃん」
反対側の隣にいたロボロさんが、とんとんと肩を叩く。振り向けばぺらりと雑面を捲った彼が、優しく微笑みかけてきて。
「大丈夫やで、あいつら先越されて妬いてるだけやから」
「……妬いてる……？」
「うん、ただの嫉妬」
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たむ(プロフ) - 今回で何回めでしょうか。ふと、この作品を読み返したくなり、読み終わると共に更新がされず時が過ぎていくのを寂しく思います。陽乃様の御健康を一番に祈りますがまた更新がされるのを気長に祈ることをお許しいただけると幸いです。長文失礼いたしました。 (8月23日 0時) (
レス) @page33 id: eba900a9f0 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - ひよこさん» コメントありがとうございます。キャラクター像や物語の軸が揺らがないように気をつけているので、お言葉とても嬉しいです。こちらこそ拙い作品と返信になりますが、のんびり頑張りますのでよければお付き合いください。 (2020年7月27日 8時) (レス) id: 612ba65c82 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - コメント失礼致します。占いツクールは設定や言動がガバガバなものが多いという偏見を持っていたのですが、この作品は全てにおいて素晴らしいなと感じました。物語に惹き込まれ、一気読みしてしまいました。拙い感想文で申し訳ございません。今後も応援しています。 (2020年7月13日 22時) (レス) id: 4949800785 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - ぴさん» コメントありがとうございます。言葉選びはかなり気を遣うので、そう仰っていただけると報われた気持ちです。コメントは気力に直結する部分もあるので、本当に有難く思いつつ返信しています。お気遣い本当にありがとうございます、私のペースで頑張ります。 (2020年6月13日 9時) (レス) id: 0fb3ccf51e (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 暁レイさん» コメントありがとうございます、なかなか軸からブレないよう書くのは難しいもので、苦労する部分もあるのでとても嬉しいです。引き続きのんびりと頑張ります。 (2020年6月13日 9時) (レス) id: 0fb3ccf51e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年6月2日 20時
