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再度窓から外に出て、近くの木にするすると登る。枝を蹴って三階のバルコニーの柵を掴んで体を引き寄せ、腹筋を使って足を振り上げ、体を捻りながら手の位置を掴み変える。一瞬逆立ちしたような体勢になり、そのまま手摺の内側に脚が降りた。成功、と思いながら軽く跳んで屋根の縁に手をかけ、そのまま登る。近くにあった天窓をそっと開ける、ここも協力者がやってくれたらしい。天井裏に通じるそこに滑り込むと、端に梯子が取り付けられているであろう出入り口を見つけ、そっとその蓋を外す。中は暗いが、スコープのおかげで見やすい。飛び降りて足音を立てずに着地し、何やら機械が置かれている机に向かった。
「……この机ですか？」
『うん、じゃあ……えっと、右の奥に大きい四角いやつあるやろ？ それの右側に二つ差し込み口があるから、左に差してや』
「はい」
USBを出し、言われた通りに差し込む。辺りを警戒しながら待つこと数分で、メモリに付けられた一本のラインが薄青に光った。
『よし、じゃあそれ回収して戻っておいで』
「了解です」
回収したUSBを内ポケットに仕舞い込み、梯子を登って蓋をする。床の埃を軽く払って足跡を消し、天窓から屋根に出た。三階から木を伝って地面に降り、ふと思い立って先程意識を落とした男の元に向かう。呼吸と脈が正常であることを確認し、思わずほっと息を吐いた。
すぐに窓から出て気づいたのは、今度はこちら側から塀を登る手段がないことだった。思わず舌打ちを零して当たりを見渡すと、門からは見えてしまうであろう位置に、数本の木が立ち並んでいる。
「……」
警備員は、外を見ている。今なら、と足音を消して走り寄り、枝に登って身を隠した。風もないのに梢を揺らす訳には行かない、最小限の動きで少し高い枝に移って幹を蹴り、塀に手を着いて乗り越える。
がさり、木が揺れた。
数秒待って、誰の話し声も気配もしないことに安堵しながら歩いてその場を立ち去る。監視カメラがある通路を避けて、元来た道を。
「……？」
その道に、誰かがいた。漂ってくるアルコールの匂いに、酔っ払いかと小さく溜息を吐きながら歩を進めると、前方に建物に凭れて座り込む男がいた。無視してその前を通り過ぎる、刹那。
「っ！」
殺気を感じて咄嗟に身を屈める。ふわりと風に靡いたフードを何かの刃が掠め、ナイフに手をかけながら振り返った先では、先程まで座り込んでいたはずの男が刃を振り上げて斬りかかってきていた。
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たむ(プロフ) - 今回で何回めでしょうか。ふと、この作品を読み返したくなり、読み終わると共に更新がされず時が過ぎていくのを寂しく思います。陽乃様の御健康を一番に祈りますがまた更新がされるのを気長に祈ることをお許しいただけると幸いです。長文失礼いたしました。 (8月23日 0時) (
レス) @page33 id: eba900a9f0 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - ひよこさん» コメントありがとうございます。キャラクター像や物語の軸が揺らがないように気をつけているので、お言葉とても嬉しいです。こちらこそ拙い作品と返信になりますが、のんびり頑張りますのでよければお付き合いください。 (2020年7月27日 8時) (レス) id: 612ba65c82 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - コメント失礼致します。占いツクールは設定や言動がガバガバなものが多いという偏見を持っていたのですが、この作品は全てにおいて素晴らしいなと感じました。物語に惹き込まれ、一気読みしてしまいました。拙い感想文で申し訳ございません。今後も応援しています。 (2020年7月13日 22時) (レス) id: 4949800785 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - ぴさん» コメントありがとうございます。言葉選びはかなり気を遣うので、そう仰っていただけると報われた気持ちです。コメントは気力に直結する部分もあるので、本当に有難く思いつつ返信しています。お気遣い本当にありがとうございます、私のペースで頑張ります。 (2020年6月13日 9時) (レス) id: 0fb3ccf51e (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 暁レイさん» コメントありがとうございます、なかなか軸からブレないよう書くのは難しいもので、苦労する部分もあるのでとても嬉しいです。引き続きのんびりと頑張ります。 (2020年6月13日 9時) (レス) id: 0fb3ccf51e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年6月2日 20時
