99.総統室 ページ1
ノックをして、返事を聞いて扉を開けて、中に入って扉を閉めて振り向いて、一礼。視線を上げた先でグルッペンさんに手招かれ、彼の執務机の前に立つ。
「よくやった、詳しく聞かせてくれるか」
「任務に使う予定の車を軽く検分したところ、助手席の裏側に取り付けられていました。恐らく私とゾム様、鬱様、御二方と取り付けた人間以外は知らないかと」
「大先生は何か言っていたか？」
「電池式だった、発信機はついていても基地の中としか表示されないだろう、生産国が割り出せればいいのだが、……というようなことを」
「電池式か、……トン氏」
「はい」
「大体三週間以内にあの車を使った人間を、……そうだな、今日は確かもう訓練は済んでいるし、シャオロンあたりに調べさせろ」
「やったら明日訓練入ってへんからシッマの方がええんちゃいます？」
「ああ、じゃあそれでいい」
三週間、と限定したのは、恐らく電池の持続がそれくらいなのだろう。ソファに座っていたゾムさんがひょこりとトントンさんの横から書類を覗き込んだ。どうやら今日のスケジュールだったらしく、せやった今日任務やわ、と呟き、把握しとかんかい、と小突かれている。
と、耳元のインカムが鳴った。
『もしもーし、グルちゃん？』
「大先生、これ全員やで」
『え、トンちやん、ほんまや。まあいいや、さっき見つかった盗聴器の話なんやけど』
「ああ」
『多分なあ、これΩ国やと思うねん』
「……ほう」
『部品の一個がな、ちょっと材質が貴重なやつでな、最近上手くいってへん国の中やったらΩ国しか碌に生産してへんし、他の国もわざわざ買ったもんこんなんに回すほど余裕あるわけとちゃうから。まあそれを見越してって言われたらわからんから、頭の片隅に置いとく程度で』
「わかった、ありがとうな、大先生」
『ん、マンちゃんも聞いとった？』
『聞いとったよ〜』
『今度外交あるやろ、一応気いつけてや』
『了解めう』
『んじゃ切るでー』
ぷつりと音声が切れ、Ω国なあ、とトントンさんが呟く。グルッペンさんの視線を受けて、彼は肩を竦めて口を開いた。
「あんたも知っとるやろ、三年前に国王がお亡くなりになって、俺らとそう変わらん歳の王子が即位した。けど半年前やったか、今度は王妃様が肺の病気患って、まだ数ヶ月やったお腹の子供も一緒に……な。丁度それからか、Ω国もその同盟国もわりと態度悪いから気になんねん。オスマンも対応に悩んどったしな」
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たむ(プロフ) - 今回で何回めでしょうか。ふと、この作品を読み返したくなり、読み終わると共に更新がされず時が過ぎていくのを寂しく思います。陽乃様の御健康を一番に祈りますがまた更新がされるのを気長に祈ることをお許しいただけると幸いです。長文失礼いたしました。 (8月23日 0時) (
レス) @page33 id: eba900a9f0 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - ひよこさん» コメントありがとうございます。キャラクター像や物語の軸が揺らがないように気をつけているので、お言葉とても嬉しいです。こちらこそ拙い作品と返信になりますが、のんびり頑張りますのでよければお付き合いください。 (2020年7月27日 8時) (レス) id: 612ba65c82 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - コメント失礼致します。占いツクールは設定や言動がガバガバなものが多いという偏見を持っていたのですが、この作品は全てにおいて素晴らしいなと感じました。物語に惹き込まれ、一気読みしてしまいました。拙い感想文で申し訳ございません。今後も応援しています。 (2020年7月13日 22時) (レス) id: 4949800785 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - ぴさん» コメントありがとうございます。言葉選びはかなり気を遣うので、そう仰っていただけると報われた気持ちです。コメントは気力に直結する部分もあるので、本当に有難く思いつつ返信しています。お気遣い本当にありがとうございます、私のペースで頑張ります。 (2020年6月13日 9時) (レス) id: 0fb3ccf51e (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 暁レイさん» コメントありがとうございます、なかなか軸からブレないよう書くのは難しいもので、苦労する部分もあるのでとても嬉しいです。引き続きのんびりと頑張ります。 (2020年6月13日 9時) (レス) id: 0fb3ccf51e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年6月2日 20時
