10.自室 ページ10
案内してもらったことへのお礼を言ってから、荷物の整理があるからと与えられた自室に足を運ぶ。ここ数ヶ月間暮らしていた場所から運び込まれた荷物が、数こそ少ないものの鎮座していた。私の設定を考えてすぐに手配してくださったトントンさんには頭が上がらない。
べりべりと段ボールに貼られたテープを剥がしながら、先程のゾムさんの訝しげな表情を思い出す。
ゾムさんとは、記憶を思い出す前に一度出会っている。暗殺依頼のターゲットにパーティで接触した時、彼も確かその場にいた。
幸いそこで依頼を成し遂げなければならないわけではなく、帰り道を狙ったので現場を見られたわけではない。けれど、お互いに身のこなしや僅かな癖が同業のそれであると気づいていただろう。
私はすぐに彼がW国の幹部だとわかったけれど、一応秘匿された存在である私をゾムさんが知る術はない。それこそ、グルッペンさんあたりが漏らさない限りは。けれど先程の対応を見るに、ゾムさんもシャオロンさんも、私が暗殺者であること、ひいてはグルッペンさんを殺しに来たことは知らないのだろう。
知っているのはグルッペンさんとトントンさん、そして。
「……ロボロ様と鬱様、かな」
軍基地に入るには手続きがいる。通路を使って侵入した私は、当然廊下を通った訳でもない。つまり、手続きも踏んでおらず、更に監視カメラにも映っていない人物がいきなり総統室に現れ、そしてここに住むことになったなどと紹介を受けているのだ。当然彼らは疑問に思うだろう、或いは私を疑い、あの紹介の場で銃を向けられていてもおかしくはなかった。
けれど、そうはならなかった。何故か、私がここに侵入したことを知らされていたからだ。この短時間に起きたことの経緯を知らされていたからだ。そして、そのグルッペンさんの判断に従うことを決めたからだ。
あの時間の監視の担当はロボロさんだった。恐らく、知らされたのは彼一人だろう。
「……よし」
下手を打たないように、なるべく彼には近づかないままに任務を終えてしまおう。ゾムさんは私と同じことをしてここに入ったようだし、兎に角信頼を勝ち得れば、グルッペンさんに気に入られれば、別段幹部になることに支障はない。
そうすれば、前世の私としては推しの力になれるという利点があり、今世の私としては流されるがままに依頼を受けてきたこれまでとさして変わらない生活を送ることが出来る。メリットはあれどデメリットはない、ならばこのままで良いだろう。
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陽乃(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます、黒猫様の御趣味に添えられたようで嬉しい限りです。続編ものんびり書いておりますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2020年5月29日 16時) (
レス) id: 89afdb7f98 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 全て見させていただきました。俺はこういう作品が好きなので、とてもいい気持ちになりながら見ていました。神作品をありがとうございます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: 0779f5a88d (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - （名前）さん» コメントありがとうございます。建物の設定は実在する基地や城塞、そして仰る通り大脱走など御本人たちの動画を参考にした部分もありますね。気づいてくださって嬉しいです。 (2020年4月12日 21時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - 9の途中まで見ました〜なんかPX、商店、、かな？みた途端、大脱走元にしてるんかなって思ったーーー！！実際どうですか？本当に大脱出が元だったら、、違うくても、話の作り方、うますぎる… (2020年4月12日 19時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 黒胡椒さん» コメントありがとうございます、のんびり更新していきますのでよければお付き合いください。 (2020年4月4日 3時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年3月16日 17時
