9.裏庭 ページ9
グルッペンさんに視線を移せば、シャオロンさんを呼びつけ、急ぎの仕事がないことを確認した上で私の案内を頼んでいる。
「ほな行こか、ここ広いからなあ、迷ったら誰かに頼りや」
「はい、そうさせていただきます」
にぱっと邪気のない笑みを浮かべるシャオロンさんの、半歩後ろをついて行く。
この軍事基地には、大きく三つの建物がある。一つは一般兵の兵舎で、一つは屋上で観測を行う、演習用の武器庫。
最後の今いる建物は三階建てで、最上階に総統室と通信室と幹部数名の個室、二階に書庫と談話室と残りの幹部の個室、一階に非常時の武器庫と医務室、幹部専用の浴場や食堂が設置されている。他にも武器庫や地下倉庫などは基地の各所に点在しており、演習場や射撃場、車両倉庫にPX、それらから少し離れたところに畑や裏庭まで整備されている。
最後に案内された裏庭の花壇を眺めていると、背後に微かな気配を感じる。シャオロンさんのものではない、もう一つ。殺気はないけれど、無視するには気にかかって振り向けば、迷彩柄のパーカーを羽織り、フードを深く被った人物がシャオロンさんの隣でこちらを見つめていた。
「……ゾム様、何か御用でしょうか」
「……いや、なんかなあ……」
さくさくと芝生を踏みしめて歩み寄ってきた彼が、ひょいと身を屈めて私の顔を覗き込む。思わず小さく肩を震わせてしまったが、気にも留めずにじっと見つめてくる若苗色の瞳はどこか訝しげな光を宿していた。
「なんか、どっかで会ったことある気がすんねんな」
「……ゾム様が外交などでα国にいらしたことがあるのなら、或いは、と思いますが……地位は秘匿されていましたが、私も基地にはいたもので」
「ああ、そうかもしらんな」
まあええか、と笑った彼は、そのまま楽しそうにどこかへ歩いて行く。シャオロンさんは私と彼を交互に見て、Aはゾムに見覚えあるん？ と聞いてきた。
「ある、というか……ゾム様もシャオロン様も、ここの幹部の方々は有名なので存じておりましたよ」
「あーそっか、あいつ外交の時はきっちりした格好しとるし、ゾムが一方的に見かけただけかもな」
「多分そうだと思います」
「あ、それより！ ようゾムの気配に気づいたな、もしかして結構強いん？」
「まさか、偶然ですよ」
へらりと笑って流すと、まあそうよな、とシャオロンさんもまた笑って。それでも時間がある時にぜひ手合わせしようと誘われたので、お手柔らかにと頷いておいた。
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陽乃(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます、黒猫様の御趣味に添えられたようで嬉しい限りです。続編ものんびり書いておりますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2020年5月29日 16時) (
レス) id: 89afdb7f98 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 全て見させていただきました。俺はこういう作品が好きなので、とてもいい気持ちになりながら見ていました。神作品をありがとうございます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: 0779f5a88d (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - （名前）さん» コメントありがとうございます。建物の設定は実在する基地や城塞、そして仰る通り大脱走など御本人たちの動画を参考にした部分もありますね。気づいてくださって嬉しいです。 (2020年4月12日 21時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - 9の途中まで見ました〜なんかPX、商店、、かな？みた途端、大脱走元にしてるんかなって思ったーーー！！実際どうですか？本当に大脱出が元だったら、、違うくても、話の作り方、うますぎる… (2020年4月12日 19時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 黒胡椒さん» コメントありがとうございます、のんびり更新していきますのでよければお付き合いください。 (2020年4月4日 3時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年3月16日 17時
