45.裏路地 ページ45
＊暴力表現(殺人、殴打)があります
すぐに店の扉が開く音がして、彼らの話し声がする。その場で別れたのだろう、こちらに向かってくる足音は一つだけだ。
両手に手袋を嵌め、右手にナイフを持って気配を殺す。足音が通り過ぎかけたところで背後を取り、左手の指を兵士の口に突っ込んで声を塞ぎ、暗がりに引きずり込んだ。
「ん゛っ……！？」
暴れる男の膝裏を蹴って地面に膝をつかせ、顔を確認すれば殺す方の男だ。噛まれた左手をそのまま引いて無理矢理首を反らせる。間髪入れずに剥き出しになった喉元をナイフで深く掻き切り、心臓を一突き。指を口から引き抜けば、自身の体から噴き出した血を浴びながら、男は前方に倒れ込んだ。
「おい、どうした！？」
呻き声を聞きつけたのだろう、片割れの足音がしたので一旦右手の塀を飛び越えて身を隠す。死体に駆け寄り、必死に声を掛ける様子が手に取るようにわかる。再度音もなく塀を越えて彼の後ろに降り立ち、支給されていた薬の入った注射器を首筋に打ち込んだ。
咄嗟に暴れ出そうとする男の手首を捻り上げて前に回りこみ、鳩尾に拳を叩き込む。呻き声を上げて動かなくなった男の脈があることを確認し、イヤホンをかつかつと叩いた。
『こちらロボロ』
「こちらA、足と掃除をお願いします」
『はいよ、一分待ってな』
ぴったり一分、路地の前に止まった黒い車から出てきたのはコネシマさんと数人の男性だった。コネシマさんは死体には見向きもせず、気絶した男を担ぎあげて車に運び込む。残りの男性は素早く死体の処理を始め、私は一礼してその場を去ろうとした、のだが。
「はよ乗れや」
「……え、あ、はい」
「足寄越す言うて置いて帰るわけないやろ」
促されるまま、後部座席に座っている彼の横にお邪魔する。気絶した兵士はトランクに放り込まれているらしく、視界の端に彼が身につけていた衣服が見えた。ドアを閉め、静かに走り出した車内は沈黙に包まれた。
気まずいな、と思いながら流れていく景色を眺める。
「なあ」
「……はい」
彼の目線がこちらに向いていることを確認してから返事をする。一瞬、運転手の方に話しかけているのかと思ってしまった。
「どうやった？」
「……殺しより、録音データと写真がきちんと送られているかどうかの方が不安でしたね」
正直に答えると、彼の勿忘草色の瞳がぱちぱちと瞬いた。次いで、その唇が弧を描くように歪み、大きく開いた。
「ふ、はは、っはっはっは、お前おもろいな！」
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陽乃(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます、黒猫様の御趣味に添えられたようで嬉しい限りです。続編ものんびり書いておりますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2020年5月29日 16時) (
レス) id: 89afdb7f98 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 全て見させていただきました。俺はこういう作品が好きなので、とてもいい気持ちになりながら見ていました。神作品をありがとうございます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: 0779f5a88d (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - （名前）さん» コメントありがとうございます。建物の設定は実在する基地や城塞、そして仰る通り大脱走など御本人たちの動画を参考にした部分もありますね。気づいてくださって嬉しいです。 (2020年4月12日 21時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - 9の途中まで見ました〜なんかPX、商店、、かな？みた途端、大脱走元にしてるんかなって思ったーーー！！実際どうですか？本当に大脱出が元だったら、、違うくても、話の作り方、うますぎる… (2020年4月12日 19時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 黒胡椒さん» コメントありがとうございます、のんびり更新していきますのでよければお付き合いください。 (2020年4月4日 3時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年3月16日 17時
