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互いの右手に握ったナイフの刃を交える。首に巻きつこうと伸びてきた左手を軽く屈んで避け、同時に勢いよく右手を引くと、ほんの少しゾムさんの重心が前へずれる。バランスを取ろうと少し動いた左足を、体の後ろに手をついて思い切り回した右足で払った。
「！」
ぐらりと彼の体が傾ぐ。右足を掴んで思い切りこちらに引き寄せ、背中から倒れる彼の腹に膝を押し付けて乗り上げながらナイフを構え直す。
「やるやん！」
「っ」
ぐいっと右手を捕らえられて、体勢が崩れた。そのまま体を捻ったゾムさんに押し倒される形で、背が地面に着く。間髪入れず振り上げられた彼の右手を弾き、逆に強くなった左手の力に、思わずといった調子でナイフを落とした。
「あ」
彼の目がそこに逸れたタイミングで左膝を引き寄せて互いの体の間に挟み込み、ベルトに差したままだったもう一本のナイフを左手で取る。正確に心臓を狙っていた彼の右手が首筋へと狙いを変え、一瞬の猶予が出来た。
「っ！？」
ゾムさんの右手をナイフで弾き、返す刀でこちらの右手首を捕らえたままの左手を狙う。慌てたように離された手は追わず、宙に放ったナイフを右手で掴み取り、先程落とした方を左手で拾う。首筋に迫ってきていたナイフを右手のそれで受け止めながら彼の左脚とこちらの右脚を絡ませ、バランスが崩れたところで左膝に力を込めて体ごと押し返した。
後方に飛び退る彼は、けれど絡んだままの左脚をどうにも出来ず、そのまま尻餅をつく。体を起こした勢いで絡んでいた脚を右に払って抜くと、ゾムさんの右脚が飛んできた。
「っと、」
左腕で蹴りを受け止める。円を描くようにして体に戻した右脚で地面を蹴りながら、右手のナイフを彼の首元に投げつける。辛うじてそれを避け、体勢が崩れた彼の横をすりぬけた。
「！」
「おおっ！」
グルッペンさんの驚嘆の声を聞きながらゾムさんの背後に回り込み、ナイフを構えていた右手を掴む。
地面を蹴って前方に逃れようとするのを肩に左手を掛けて引き戻すことで防ぎ、右に体を捻る彼から手を離さずに、その勢いを利用してうつ伏せに地面に叩きつけた。
「ぐっ」
体の下に戻されそうになった右手を捻りあげて彼の背に押し当てさせ、膝でそれを押さえて彼の体に乗り上げる。肩越しに投げられていたナイフを首を捻って避け、彼の首筋に左手のナイフを突きつけた。
「……」
「……あー、降参や、降参」
かくん、とゾムさんの体から力が抜けた。
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陽乃(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます、黒猫様の御趣味に添えられたようで嬉しい限りです。続編ものんびり書いておりますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2020年5月29日 16時) (
レス) id: 89afdb7f98 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 全て見させていただきました。俺はこういう作品が好きなので、とてもいい気持ちになりながら見ていました。神作品をありがとうございます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: 0779f5a88d (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - （名前）さん» コメントありがとうございます。建物の設定は実在する基地や城塞、そして仰る通り大脱走など御本人たちの動画を参考にした部分もありますね。気づいてくださって嬉しいです。 (2020年4月12日 21時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - 9の途中まで見ました〜なんかPX、商店、、かな？みた途端、大脱走元にしてるんかなって思ったーーー！！実際どうですか？本当に大脱出が元だったら、、違うくても、話の作り方、うますぎる… (2020年4月12日 19時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 黒胡椒さん» コメントありがとうございます、のんびり更新していきますのでよければお付き合いください。 (2020年4月4日 3時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年3月16日 17時
