【文スト】白虎の片割れ。【中島敦】

Episode.37 - Abilities ページ39

───







「────！」




姉様と目が合った瞬間だった。



私を覆い隠していた夜叉は、突然──








姿を消した。







私と姉様の距離が始めて、こんなにも近かったのかが分かった。







其処から見えた姉様の姿は。



月夜に咲く、一輪の白い華の様だった。







.



「今の、は…？」



鏡花の夜叉が、消えた。私が話しかけた、から？







「…姉様、ありがとう。私を、助けてくれて」




鏡花は、先刻より、少し明るい表情になった。



「姉様、…姉様も、異能力者、だったんだね」





異能力(・・・)。



少し信じがたいけど。



先刻のは、私の“異能力”だったんだ。









此れはきっと、大切な人を守る為の力。








「…鏡花、この、私の異能力に、名前を付けてくれないかな」



「私、が？」



「うん。

私は此の力を、大切な人を守る為に使う。今、私が一番大切な人は、鏡花なの。


一番大切な人に、付けてもらいたいんだ」



鏡花の表情はだんだんと和らいでいく。
そのまだ幼い瞳に、私は無二の愛おしさを感じた。




「…うん…！
…姉様の能力名は───





白華。



白い華で、白華(はっか)」




白華。なんて綺麗な名前なんだろう。







「ありがとう、鏡花。此の力、大切に使うよ」





.





路地裏で芽生えた、新たな力。



今後、その力はどうなって行くものか───。




.



Abilities=異能力

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