【文スト】白虎の片割れ。【中島敦】

Episode.36 - Alley ページ38

───





もう、かなり走った。



脚はもう限界を迎えている。
でも、今の私には、“限界”なんて言葉は通用しない。



あと少し。…あと少しで、着く。







.



「鏡、花…！」



「姉様！！！…」





…其処にいるんだ…！待ってて、直ぐ行く。









______目を疑った。



鏡花を覆い隠す様に佇む、美しい、人形の様な____ 。



その夜叉の鋭い眼光に、私はたじろぎそうになる。
鏡花が助けて、と言っていたのは、此れ…？



「鏡花…此れ、は」



そう、私は尋ねた。






鏡花が、口を開く。







「…私の、異能…」



……異能？







「姉様…
私、知らない間に、こんなに恐ろしい刃(やいば)を隠してた…。

私、自分が何者なのか、分からない…！」







何者なのか───、か。






そんなの───









「鏡花」



鏡花を覆い隠す夜叉を無視し、私は語りかける。







「鏡花は、私の妹。たとえ血が繋がっていなくとも。
私は、もし、鏡花が何者になったとしても───


私はいつだって、鏡花の味方だよ」




そう言い、私は優しく微笑みかけた。









鏡花と目を、完全に合わせた。




瞬き。




一度、目を閉じ──




また開く。







何かが黄金色に光った───









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Alley=路地裏

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