【文スト】白虎の片割れ。【中島敦】

Episode.35 - Sprint ページ37

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───お願い。







私から家族を奪わないで…!








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夜の街に響く呼吸音。



「お父様、…携帯、勝手に借りて、ごめんなさい」







先刻の喘息の発作なんて、なかったかの様に、私はただ街を駆ける。



「鏡花……！…何、処…？」



もう既に、鏡花を探し始めてから1時間程。



お願い、鏡花……！



今、貴女だけが私の唯一の_______。







.



───近所の公園。



───かつて家族全員で歩いた商店街。



───鏡花の好きな、湯豆府屋さんの前。



心当たりがある所は全て探した。



矢張り、見つからない。



お願い、早く……







「……あ…」



手のひらでずしりと重みを感じさせるもの。



「お父様の、携帯電話…」







もう、此れを使うしかない。
だって、あの日鏡花はお母様から…。



「絶対に、手放してはいけません」



って……。









うろ覚えの鏡花の携帯番号を、震える手で押していく。







お願い、出て。







───






携帯の呼び出し音が鳴り終わった。








「もしもし___」



「姉様…！！！」



私の声を遮る様に、ソプラノの高い声が携帯から聞こえた。





鏡花だ。






「鏡花……！良かった…！何処に、何処にいるの？鏡花…！」



「…姉、様……！」



「どうし_____」


「今すぐ来て…！ショッピングストリートの路地裏…！


お願い、姉様…
───助けて








「…！」







鏡花の先刻の一言で、通話は切れた。









.



直ぐ行くから。

───待ってて。









私はただ駆けた。妹を助けるために。



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Sprint=疾走

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