QK短編集

遺〜mrfk ページ9

『まだこっちに来たら駄目だよ』
そう結ばれた文。
紙の上で踊る彼の字。
涙で滲んだ万年筆のインク。
草花がデザインされた便箋。
これまでの当たり前は、愛すべき人とともに消え去ってしまった。
彼が亡くなったのは両手では数えきれない程前の事だと言うのに、僕はまだその事実を受け入れられていない。
もう皆はとっくに受け入れて立ち直っているというのに。
自分の脆弱な精神が憎らしい。
毎日、テーブルの向かいに君がいないだけで。
君と撮った最期の写真を見るだけで。
涙を零してしまう僕はまだ君のことを忘れることができていないのだろうか。
｢ねぇちょっと〜、泣かないでよ〜(笑)｣
君の声を思い出す。
改めて実感してしまう。
もう君はいないのだと。
本当は君が亡くなってしまった時、すぐにでも後を追いたかった。
あっちの世界で一緒に、幸せになりたかった。
君からの手紙なんか見つけなかったら、まだ俺が生きていることはなかっただろう。
これまでは君の為に何かしてあげられたことなんてなかったから
今、頼まれたことくらいは最期までやり遂げなければならない。
僕にとっての幸せは、君が笑顔でいられることだから。
…どうして君は僕を置いて逝ってしまったの？
どうして僕に何も言わなかったの？
どうして、どうして…
僕は、今すぐにでも死にたいのに。
｢ねぇ、福良。｣
嗚呼駄目だ、これ以上考えるとまた、
「お前は、笑ってくれって言ったけど。」
そんな心とは裏腹に、溢れ出た思いが止まらなくて。
「もう、誰も僕はのことを笑ってはくれないんでしょ?」
僕が笑顔でいる他に、君が幸せになることはできないのも知ってる。
「もう、誰も幸せになれないんだから。」
だけど、
もう少しだけ、待っててね。
｢いつか、そっちに向かうから。｣
僕の事、愛し続けてて。


『もうすぐ死んでしまう俺から、最後のお願い。

どうか笑っていて
まだこっちに来たら駄目だよ』

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mrfkですー。
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