アリス、さまよう ページ8
イタリアの街中をトボトボと歩く少女が1人｡
彼女は水色のワンピースの上に白いエプロンを着けて､しましま模様の靴下と黒いパンプスを履いていた｡せっかくの晴天にも関わらず､彼女の背負う空気はどこか暗い｡しかし道行く人は彼女のことなど気にもとめず､彼女の横を通りすぎていった｡
｢……着てたお洋服､洗濯しないまま出てきちゃったな｣
ぽつりと呟いて少女はまた小さな一歩を踏み出す｡
するとどこかから彼女にしか聞こえない声がした｡
｢お嬢､これからどうするつもりだ?｣
｢どうしよっか｣
勢いだけで出てきてしまっただけに､どっちに行けば正解なのか少女には見当もつかなかった｡
向かうべき場所は分かるが､それがどこなのかは分からない｡どうしようもない状況に彼女−−Aはいた｡
｢タリアテッレってどこにあるんだろう｡ジョーさん知ってる?｣
Aは小声で誰かに話しかけた｡誰かとはもちろん､自身が嵌めているガルディアーノのリングである｡
リングはただ一言知らないと言って､黙りこんでしまった｡
｢ツナさんたちに迷惑かけたくなくて出てきちゃったけど……ちゃんと道聞いてくればよかったかも｡ごめんね､ジョーさんまで巻き込んだのに｣
｢かまわない｡吾輩は､置いていかれる方が辛い｣
そうしたら裏切られたとして､お嬢を殺さねばならないからな｡
その悲しい事実をリングが告げることはなかった｡
そこへ｡
｢
唐突な呼びかけが自分に対するものだとは思わなかったAは､ガン無視して通り過ぎた｡
｢
肩を叩かれたことでようやくAは自分に声がかけられていたことに気づく｡声をかけてきたのは2人組の男性｡どうやら彼女を褒めあげ､何かに勧誘しているらしい｡
しかし残念ながら彼女には何を言われているかさっぱり分からなかった｡イタリア語だろうという推測はできたものの､内容がちんぷんかんぷんで困る他ない｡
ちゃんとイタリア語講座受ければよかったなあ｡帰ったら獄寺さんにいっぱい教えてもらおう｡
そう考えてふと思った｡
帰るってどこに?
私に帰る場所なんてもう､どこにもないのに｡
引き続き話しかけられているのに､Aは上の空だった｡
だからリングの逃げろという勧告に耳を傾ける余裕なんてちっともなかったし､首筋に受けたことのない衝撃を食らった次の瞬間にはすでに意識がとんでいた｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年9月17日 21時
