アリス、伝える 01 ページ32
Aは緊張した面持ちでソファーに浅く座っていた｡かれこれ10分はその状態で固まっている｡
｢10代目､本当に大丈夫なんすか?｣
獄寺がツナにひそひそと耳打ちした｡一応彼女の心配はしているらしい｡
｢うーん､大丈夫だと思いたいけど……俺が口出しできることじゃないからさ｡これはAが自分で決着つけないとだめだから｣
ツナは微動だにしないAを見て､そう答える｡
同じように彼女を見た獄寺は少し黙って､ただ一言
｢……そうっすね｣
と言うことしかできなかった｡
一昨日､Aはボンゴレから姿を消した｡その行方を守護者たちが必死に捜していた時､ツナから連絡がきたのだ｡
Aを見つけた､と｡
きっとツナは守護者たちが自分に無断で捜索することなどお見通しだったのだろう｡個別に連絡がくるのではなく､ボンゴレファミリー幹部の連絡網へとメッセージが送られてきたのがその証拠だ｡
あまりにもあっけなく見つかったものだから､守護者たちは拍子抜けではあったが心の底から安堵していた｡
しかしメッセージには続きが｡
『ひとまずAを連れ戻したけど､タリアテッレに行くと言ってきかない｡
でもあの顔は嘘をついてる顔だと思う｡
びしょ濡れだったからとりあえず風呂に入れた｡出てきたら話を聞きたいと思う｡』
これを読んだ守護者たちは､自分たちが今できることはないのだと悟った｡
あとはツナに任せるしかない｡
そう思った彼らは各々本部へと踵を返した｡
本部に戻った後も､何となく自分たちの部屋には戻れず｡彼らの足は会議室に向かう｡
会議室に着くまでに捜索に出ていた4人全員が合流した｡無言でクロームがドアを開けると｡
｢骸様……｣
会議室の壁にもたれかかる長身の男が1人｡
クロームたちが全員会議室に入室しても､動く気配はない｡
｢僕も連絡網に入れられてるんです｡事の次第を知っていて当然でしょう｣
｢そうじゃなくて……｣
｢骸も極限にAを心配していたのだな!｣
クロームが口ごもっていたことをいとも簡単に笹川が言ってしまったものだから｡
｢そんなことありませんが!?｣
案の定骸が違うと吠えた｡
しかし､笹川了平にツンデレは通用しないのだ｡
｢違うのか?それならなぜここに?｣
まっすぐな彼からの視線にたじろいだ骸は､スタスタと遠くの席へと腰かけた｡無視を決め込むつもりらしい｡
獄寺は呆れたようにため息をつき､山本は苦笑いを浮かべるしかなかった｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年9月17日 21時
