アリス、眩ます 01 ページ4
夜が明けた｡
朝になってもAは顔を見せにくることはない｡
これだけだったなら､きっと気まずいのだろうと思えた｡しかしどうやら獄寺の部屋にも戻ってきていないらしい｡
様子を見にいこうかと尋ねる獄寺にやんわりと断りをいれ､ツナは立ち上がった｡
｢俺が見てくるよ｡獄寺くんは仕事に取りかかっててくれる?｣
そう言われてしまえば獄寺も従うしかない｡足早に部屋を出ていった｡
一方ツナは足が地面から離れないかのようにしばらく動こうとはしない｡
気まずいのはツナも一緒｡それになかなか決心がつかなかったのだ｡
生憎昨日のように早く行けと背中を蹴り飛ばしてくれる者はいないからいつまでだってグダグダしていることも可能だった｡
｢……行こう｣
それでも彼が行動に移ることができたのは､やはりAが心配だったから｡気まずさよりその気持ちの方が大きかったのだ｡
重い足を引きずるように医務室への道のりを進む｡
しかし医務室のドアの前で再び立ち止まってしまった｡
ドアノブに触れようとし寸でのところで手を引っ込めたり触れてもすぐに手を離したりを繰り返し､意味もなく時間が過ぎていく｡何やってんだと自分でツッコミをいれたくなる｡
ようやくドアをガラガラと引くことできたのは5分以上経ってからだった｡
｢A､俺だけど｡……A?｣
返事はなかった｡まだ眠っているのだろうか?
Aにしては珍しい､いつもならとっくに起きている時間なのに｡
そんなことをぼんやりと考えていたツナだったが､何かが背筋を走った途端､慌ててベッドに駆け寄った｡
カーテンを乱雑にめくったその先を見て､彼はプライベート用のスマホを手に取り電話をつないだ｡
｢あっ獄寺くん!今どこにいる!?一旦自分の部屋に戻ってみてくれないかな､できるだけ早く!｣
一方的に用件を伝えて電話を切ると､ツナは慌ただしく医務室を飛び出した｡
もぬけの殻となったベッドにはもはや目をくれず｡
医務室から獄寺の部屋まではそこそこ距離がある｡ハイパーモードでないツナは駆け出してすぐに息が上がってしまったが､それでも足を止めることはなかった｡
｢Aっ……!｣
どうかそこにいてくれ｡
そう願うことしかできなかった｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年9月17日 21時
