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｢え?｣
｢本気なの?｣
隣に座るハットが繰り返して言った｡何がと問えば､ため息をつかれる｡
｢タリアテッレに､本気で来るつもりか?｣
一瞬､ぐっと息が詰まった感覚がよぎる｡思わず止めてしまった呼吸を再開させてから､Aはその問いに答えた｡
｢当たり前じゃん!……何で､そんなこと聞くの?｣
声が震えるのが彼女自身にも分かった｡覚悟が揺らぎそうになって､慌てて気を引き締める｡
｢思い出したみたいだから言うけど､タリアテッレは二度もAを危ない目に遭わせてるんだぞ｡そんな相手のところにわざわざ来るなんて｣
｢ハットくんだって､酷いことされたのにタリアテッレにいるじゃん｡それと一緒だよ｣
｢一緒じゃない｡俺は拾ってもらった恩があるし､ドンを心から尊敬してる｡だからタリアテッレに身を置いてるんだよ｡でもAは違うだろ?｣
その通りでぐうの音も出ない｡A自身にタリアテッレへ行く義務はないはずなのだ｡
｢……だって､ドンにお願いされたし｣
｢うん｣
｢行かないって言える感じじゃなかったし｣
｢うん｣
｢掟のことだって｣
｢……うん｣
Aは言い訳するみたいに次々理由を挙げていった｡それに反論せずに頷いてくれるハット｡
いくつか挙げていって､ふと彼女が言葉を切る｡終わったかと思ってハットが目線を移してみれば｡
｢……え､何で､泣いて､｣
｢だってええええ｣
ぐずぐずと泣いているAが､そこにはいた｡今日は一度も泣いていなかったのに､あまりにもあっけなくきれいな涙がこぼれ落ちていく｡
｢ツナさん､何も言ってくれなかったんだもん!タリアテッレ行くって言った時､そっかしか言ってくれなかった!ほごしてくれたのに､邪魔じゃないって言ってくれたのに!やっぱり､やっぱりAは､私はいらない子だったんだっ!ハットくんも酷いよ!お迎えにきてくれたんじゃないの!?なのに何で､決めたのに､だめになりそうなこと言うの!?私は､私はっ､｣
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年9月17日 21時
