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男は己の顔が焼けるのを涙をためて待ったが､その瞬間が訪れることはなかった｡
｢なんっ……骸!?｣
なんとまっすぐ下ろされるはずだったツナの腕は､骸によってがっちり掴まれていたのである｡
驚いている表情の中に何でとでも言いたそうな不満の交じったツナの顔｡骸は1つため息をつくと､パッと腕を離した｡
｢冷静になれ､沢田綱吉｡この男の言っていることは矛盾している｡これだけボコボコにされていてAを殺した?明らかに無理があるでしょう｡第一､ここにあの子の死体はない｡君もその目で確かめたはずだ｣
骸の話を聞いて､ツナは力なく腕を下ろした｡
コイツの言う通りだ｡だけど……｡
それならAはどこにいる?
｢考えられる選択肢は2つです｡第三者に連れていかれたか､自力で逃げたか｡さて……言った方が身のためだと思いますよ｣
ツナの抱いた疑問への答えを提示した上で､骸は男にチャンスをやった｡
先ほどの恐怖がまだ消えないのか､男は顔を真っ青にしたまま小声で言う｡
逃げたんだ､と｡
｢それなら､探しにいかないと……!｣
｢10代目｣
静かにしていた獄寺が不意に口を開いた｡うつむいているため､その表情は残念ながら読み取れない｡
彼が呟いた言葉を､ツナはすぐに飲み込めなかった｡
｢……一旦退きましょう｣
｢な……何で｣
｢もしかしたらすでにタリアテッレに到着しているかもしれません｡それにここにはこの後警察が来ることでしょう｡近場にいたとなれば厄介なことになりえない｣
｢だからって!｣
ツナには抗議することができなかった｡
獄寺も辛そうな顔をしていたから｡彼だって探したいに決まっているのだ｡だって何だかんだ言いながらも彼女を可愛がっていたのだから｡
｢闇雲に探しても仕方ありません｡本部に戻りましょう､10代目｣
｢獄寺隼人と同意見というのが癪ですが､僕も賛成です｡今の君に到底Aは見つけられない｡頭を冷やすことだ｣
パトカーのサイレンがもうそこまできている｡ツナは血がにじみそうなくらい強く手に爪を立てると､小さく頷いたのだった｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年9月17日 21時
