遠いあなたと日常を (ページ28)

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「パスポート、持った？財布ある？携帯は？」

「あるよ！オカンか！」

空港でそんなやり取りをガチの親子のとなりで繰り広げる私たち。

「よし、じゃあ翔。いってらっしゃい！」

「うん、また帰る時、今度は連絡するから」

「また外国人にナンパされないように気をつけるよ」

「その前に、ちょっとは英語を勉強しとけよ」

ふたりで顔を見合わせて、微笑む。

あぁ、これで最後。いや、これは最後なんかじゃない。

「またな。A」

「うん。また……」

全力で手を振りながら搭乗口に向かう、翔。

……ちょっと幼く見える。でもそんなところも大好きなんだ。

頭いいくせに、要領は悪い方で、運動もあんまりできない。

でも、優しくて面白くて気遣いがすごくて、心の底から信頼して尊敬して、

愛したいと想える人。

「よし！」

そんな彼を乗せた飛行機が旅立ったのを見送り、私は仕事に向かう。

また帰ってくる時は、空港に迎えに行こう。

そして一緒にシチューを食べてたくさん話して。

「いや、その前に……」

私は途中で本屋に寄った。

そして英単語帳を握りしめ、レジに向かう。

私が納得いく仕事ができたら、今度は彼にわがままを聞いてもらおう。

………私は、一緒にどこまでもついて行きたいんだって

【遠いあなたと日常を】終わり