擬似恋愛【鶴丸国永】 (ページ8)

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電車で五駅、徒歩で三キロという一般人が好んで寄りつかないような場所に彼女の墓はある。私がそこへ行ったのは器と紐付けされてから一度だけ。あの時は随分と変なことが多かった。

政府や医者からは墓参りは一人で行けと何度も言われた。

自分の住んでいる町から離れていくにつれ乗客はだんだんと数を減らし、終着駅に着いた時には私以外車両に人は居なかった。
墓へと向かう途中にはだいぶ歳を取った猫が居て、私にちょっかいを出しては威嚇した。

墓に辿り着いたと思えば、あの頃はもう初夏であったのに、桜の花びらが舞っていた。その時に会った白い人もまた、不思議だった。なんと形容すればいいのだろうか、顔のない男のような、特徴のない人であった。
＿＿白。唯一、その形容し難い白さだけは覚えている。

「墓参りかい？」
「えーっと、まぁ、そんな感じです」
「誰の？」
「……この身体の」

やけに質問が多い、とその人を見上げた時に、器が急に言うことを聞かなくなった。

「そうか、きみはそれを選んだのか」

何の話だと聞き返そうとして、私は目を見開いた。……私は誰と話していたんだろうか。振り向いても、そこには誰も居なかったのだ。

……