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……
そういえば、と隣の同級生を見やる。
「きみ、名前なんていうの」
「名乗る時は自分からって教わらなかったのかい?」
「言わなくてもわかる気がして。なんだかきみ、私のことを知ってるように感じたから」
「それは気のせいというやつだろう、俺はきみのことを何一つ知らんな」
「そう? てっきりなんでも知ってるのかと思ってた」
どうやら勘違いだったみたい。私の名前はね、なんて言って躊躇った。ずきずきと悲鳴を上げる心臓が仮説を確信に変えようとしている。
ここまで来て見て見ぬふりをしてるなんてできなくて、だから私は自分に正直になろうと思う。
__器は彼を、おそらく彼の器を知っている。
見つけた時からずっと、無意識に手を伸ばしてその白さの存在を確かめようとするみたいに。まだ死んでないとでも言うかのように、器は魂に主張する。『私は彼を知っている』と。
言葉を飲み込んだ私を不思議がって、彼がこちらを見下ろした。
「どうかしたかい?」
「多分、きみの器は知ってるよ。私の名前はね__」
蜂蜜色の双眸に囚われた、と冷静な方の私が告げる。彼と私の距離は普通じゃ考えられないくらい、近い。離れろと脳が司令を出しているのに、手も足も動かせない。
「器と同じなの」
白が視界の隅で揺れた。
……
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作者名:木浪 | 作成日時:2020年4月21日 15時