擬似恋愛【鶴丸国永】 (ページ6)

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鶴丸国永、そう彼は名乗った。その白さからは想像もつかないほどからっとしていて、明るくて、その上お喋りで。彼をクラスまで送り届ける間も沈黙なんてものは存在しなかった。

「鶴丸くん、きみ、たしか三組だったよね」
「よく覚えてるなぁ」
「さっきも言ったけど、必要なことは覚えられるようにできてるんだよ。人間の身体って」
「きみ、俺達が本当に人間だと思うのかい？」
「……違うの？」
「あぁ、いや、俺の器がって意味でな」
「きみは審神者じゃないの？ ……まぁ、魂が乗っ取られることはあるかもしれないね、私は別にそれでもいいと思ってるけど」

モルモット、被験者、実験体。
様々な呼ばれ方はするけれど、私達は一方的に利用されているわけじゃない。なにかしらの影響で眠りについた審神者やら刀剣男士やらもまた、私達に利用されているのだ。だから、私は他者である器に自らの魂が乗っ取られても、文句は言えないと思っている。

「随分と達観してるな」
「そう？見ず知らずの場所に来て最初に屋上を目指してたきみには言われたくない」
「あれはまぁ、一種の本能ってやつだ」
「どうだか。……着いたよ。ここが三組」
「ありがとう、おかげで助かった」

いつかお礼をしないとな、と彼は口角を上げた。鶴の恩返しじゃないんだからと冗談交じりに返せば、「いーや、案外本気かもしれないぜ？」と手を振られる。

反射のように振り返してしまった。ばいばい、口をついた言葉は多分、聞こえていない。

顔が熱くなっている。鼓動もなんだか煩い。順応してきたはずの器は、熱暴走でも起こしたみたいに私の意思を無視している。目が回りそうだ、ごちゃごちゃして思考が纏まらない。時々こういう誤作動を起こすから、やっぱりこの身体はあんまり好きになれない。

彼は、彼の器は審神者だったのだろうか。白くて輝いていて、目を離せば消えてしまいそうなほどに儚い印象を受ける鶴丸国永という少年。触れたら壊れてしまいそうなその見た目に反して、彼はよく話し、よく笑う人だった。

……